抄録
交換期における乳歯の生理的な歯根吸収に伴う歯の動揺を客観的に測定し,その動揺から歯根,歯根膜,歯槽骨の状態を把握する事を目的として歯に衝撃を加え,その際生じる歯の振動をとらえることにより動揺の変化を計測する振動測定システムを考案した.そして本研究は振動波形の周波数軸波形におけるピーク周波数を測定項目とし,歯根の形態変化が及ぼす重量,重心,歯根長の変化がピーク周波数に及ぼす影響を模型上で検討した.その後,被検者における測定を行って,振動測定システムを臨床に応用する可能性について検討し,以下の結果を得た.
1)本実験に使用した振動測定システムに関する限りでは,歯根の吸収に伴って周波数軸波形におけるピーク周波数が低域ヘシフトすることが明らかとなり,乳歯の歯冠歯根長比との間に高い正の相関(r=0.840)が認められた.
2)根吸収に伴うピーク周波数の低域シフトの原因として,重量の軽量化よりも,歯根長の短縮に伴う歯頸部から切端側への重心移動が大きな要因であることが模型実験の結果から示唆された.
3)本実験における振動測定システムを臨床に応用する可能性を確認した.