小児歯科学雑誌
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接着性コンポジットレジンの乳歯歯髄への影響ならびにDycalの歯髄保護効果について
山田 聖弥野坂 久美子甘利 英一
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1990 年 28 巻 4 号 p. 1025-1035

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抄録

幼犬乳歯66歯を用いて,接着性コンポジットレジンClearfil SC New Bondの歯髄への影響ならびに即硬性水酸化カルシウム系覆髄剤Dycalの歯髄保護効果について検討した.研究方法は,各歯の唇面に5級窩洞を形成し,その後,ストッピングのみ填塞(S群),Dycal覆髄後ストッピング填塞(D+S群),Dycal覆髄後レジン充填(D+R群),レジンのみ充填(R群)の4群に分けて填塞後,3日,1週,2週,4週の各期間において,歯髄組織,象牙芽細胞層,象牙質の組織変化を病理組織学的に検討した結果,次のような結論を得た.
S群において,病理組織学的変化の出現状況は,3日目,1週目に多く出現し,2週目以降減少する傾向を示し,4週目でほぼ正常となった.しかし,R群では全期間を通じて最も強い組織変化を示し,4週目までほぼ変わらず,レジンの歯髄刺戟性は強く,持続性があるものと思われた.
一方,D+S群,D+R群では3日,1週目ではS群より組織変化は強かったが,2週目以降その変化が減少していたことから,Dycalそのものも歯髄刺激性を持つものの,一過性であり,レジンの歯髄刺激に対する保護効果はあるものと思われた.また,レジン充填の際にはなんらかの歯髄保護が必要であると考えられた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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