抄録
歯科治療における小児の適応性を知る目的で, 本学小児歯科外来を受診した2 歳から6歳までの小児60名について,一口腔単位の治療期間における適応の経時的推移を観察・評価した.さらに小児の性格,母親の性格,母子関係(養育態度)を知る目的で各種心理検査を行ない,各々の関連について検討し,以下の結果を得た.
1)治療期間における適応の推移を大きく4パターンに分類した.対象児のうちその占める割合は,適応継続児45.0%,適応獲得児18.3%,不適応継続児16.7%,極度不適応児20.0%であった.
2)2・3歳の低年齢不適応児においては,小児の性格,および母子関係に特に問題特性を認めなかった.
3)4歳極度不適応児において,〈自主性〉〈退行性〉〈学校(幼稚園)への適応〉の項目に小児の問題特性を認め,〈不安型〉〈溺愛型〉〈盲従型〉〈不一致型〉の項目に母子関係(養育態度)の問題が見い出された.
4)5・6歳の極度不適応児は皆無であり,不適応継続児において,小児の性格,母子関係に若干の問題特性傾向を認めた.
5)小児の歯科治療における適応と母親の性格との間に関連を認めなかった.