小児歯科学雑誌
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小児の下顎前方滑走運動に関する研究
早崎 治明山崎 要一中田 稔
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1991 年 29 巻 2 号 p. 379-388

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抄録

小児の下顎前方滑走運動の特徴を明らかにするため, 複数の下顎任意点について三次元的に同時解析が可能な,下顎多点運動解析システムを用いて,ヘルマンの歯年齢II A(男児3名,女児6名),III A(男児2名,女児7名)の小児,および成人(男性9名)の前方滑走運動を計測し解析を加えた.
解析点は,乳歯列では下顎切歯点,左右乳犬歯尖頭,左右第二乳臼歯遠心頬側咬頭頂,永久歯列では下顎切歯点,左右犬歯尖頭,左右第一大臼歯遠心頬側咬頭頂とした.また,運動を比較するため,咬頭嵌合位を始点とし,下顎切歯点部の移動距離が0.5mmから5.0mmまでを,0.5mmごとに区切り,各解析点ごとに解析を加え,その運動方向を矢状面,前頭面,水平面への投影角として表わした.
また,それぞれの角度とオーバーバイト,オーバージェットとの相関を求めた.
その結果,歯年齢II AおよびIII Aの小児では,成人より矢状面投影角が有意に小さく,下方への動きが少なく浅い運動をしていた.前頭面投影角は歯年齢II A,III A,成人と順次大きくなり,前方滑走時の左右への偏位が減少していた.また,歯年齢II Aの矢状面投影角では,オーバーバイト,オーバージェットと有意な正の相関が認められたが,歯年齢III Aでは,水平面投影角とオーバージェットと間で負の相関が見られ,オーバージェットが下顎の左右への偏位を規制していると考えられた.歯年齢III Aは,歯年齢II Aと成人の移行型と思われる運動をしていた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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