小児歯科学雑誌
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29 巻, 2 号
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  • 計測機種別測色値の比較
    細矢 由美子, 後藤 讓治
    1991 年 29 巻 2 号 p. 269-290
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    計測機種,測色時の背景色並びにコンポジットレジンの厚径が,コンポジットレジンの経時的測色値に及ぼす影響について観察した.
    直径10mm,厚さ1mmと2mmのレジンディスクをSilux Plus(3M社)を用いて作製した.試料を37℃ の人工唾液中に浸漬し,硬化1日後,1週間,1カ月,2カ月,3カ月,6カ月,9カ月及び1年後の色調を,背景色なしと背景色が白色板の場合について測色した.測色には,村上色彩技術研究所製高速分光光度計CMS-500にフレキシブルセンサー FS-3を組み合わせたもの(CMS-5)とFS-1を組み合わせたもの(CMS-2)並びに同社製ライトガイド方式色差計CD-270型に改良型ライトガイドを組み合わせたもの(CD-270改良)を用いた.
    1)同一試料に対する測色回数が多くなると測色計より発する光の影響で,コンポジットレジンに色調変化が生じる可能性が観察された.
    2)CD-270改良使用時には,測色精度が劣り,明確な経時的色調変化が得られにくかった.
    3)CMS-5とCMS-2の両機種は,レジン厚径が1mmと2mmの両者について,背景色の有無にかかわらず,経時的な色調変化が観察され,レジンの経時的変色の測色に適していた.
  • 木村 光孝, 西田 郁子, 牧 憲司, 高橋 宙丈, 渡辺 博文, 野沢 典央, 堤 隆夫, 岡 裕美子
    1991 年 29 巻 2 号 p. 291-298
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は食物の硬軟による咀嚼機能の変化が下顎骨にどのような変化を及ぼすかを明かにした.3週齢のWistar系雄ラットにそれぞれ固型飼料群,練飼料群-I,練飼料群-IIおよび粉末飼料群の飼料を与え,飼育6週間後に下顎骨に及ぼす影響を検索し,次のような結果を得た.
    1.飼料の平均圧縮強さは固型飼料群で94.32kg/cm2,練飼料群-I 45.23kg/cm2,練飼料群-II 14.20kg/cm2,粉末飼料群0であった.
    2.写真濃度所見は,固型飼料群が最も濃度が高く練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に歯槽骨骨濃度は減少した.
    3.下顎骨計測所見は,固型飼料群と練飼料群-Iおよび練飼料群-IIの下顎骨長および下顎枝高はほぼ同程度の値を示したが,粉末飼料群の値は減少した.
    4.X線マイクロアナライザーによる分析所見では,歯槽骨のCa,Pの点分析による定量分析を対照群と比較した相対Ca量比(Ca/[Ca]c)およびP量比(P/[P]c)を求めた結果,固型飼料群および練飼料群-Iはほぼ同程度の値を示し,練飼料群-IIおよび粉末飼料群に比べ高い値を示した.
    5.下顎骨破砕強度は固型飼料群が最も強く,練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に低値を示した.
    以上のことから食物の硬軟の変化によって歯槽骨の内部構造に影響を及ぼすことが明らかになった.
  • 空田 安博, 加来 昭典, 周 適宏, 高江州 旭, 矢野目 鎮照, 木村 光孝
    1991 年 29 巻 2 号 p. 299-307
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    重合したコンポジットレジンから溶出した残留モノマーを定性,定量した研究は多数あるが,コンポジットレジン中の残留モノマーを直接定性,定量した研究は少ない.そこで我々は,市販用の光重合型と化学重合型コンポジットレジンを用い,この歯髄為害性の原因の一つとして考えられているモノマー,特にBis-GMAとTri-EDMAについて残留モノマーを定性および定量し,各材料間で比較検討した.
    1.各材料間ではBis-GMAはフォトクリアフィルブライトとクリアフィルフォトポステリアが6.5%と最も少なく,次いでP-50,パルフィークソフト,クリアフィルポステリアの順で多くなり,クリアフィルscが23.1%と最も多かった.また,Tri-EDMAはクリアフィルフォトポステリアが0.4%と最も少なく,次いでP-50,フォトクリアフィルブライト,クリアフィルSC,クリアフィルポステリアの順に多くなり,パルフィークソフトが20.0%と最も多かった.
    2.化学重合型が光重合型に比較して残留モノマー率は高値を示した.
    3.光重合型における光照射時間と重合深度については,光の照射時間が長くなればなるほど残留モノマーが少なくなり,また重合深度では深くなればなるほど残留モノマーが多くなった.
    この残留モノマーの問題は,たとえ残留モノマーが表層ぼかりでなく深部に存在していたとしても何らかの原因によって表面にでてくる可能性がある.このようなことからコンポジットレジンの残留モノマーに関して,この重合体中の残留モノマー量を測定することから始めなければならないと考えられる.
  • 第1報 齲蝕現症との関係
    細矢 由美子, 安藤 匡子, 高風 亜由美, 池田 靖子, 加島 知恵子, 後藤 讓治
    1991 年 29 巻 2 号 p. 308-324
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    3歳から17歳6カ月(平均年齢7歳3カ月)の小児100名に対し,ミューカウント,RDテスト“昭和”,カリオスタットTMを用いて齲蝕活動性試験を行った.齲蝕活動性試験結果と齲蝕罹患状態,齲蝕進行状況並びに齲蝕状況との関係を歯牙年齢別に比較し,蝕活動性試験結果と齲蝕現症との関連性について調査した.
    1.被験者全体についてみると,すべての齲蝕活動性試験において,スコアーが高いほど蝕罹患状態も高かった.
    2.被験者全体に対する齲蝕活動性試験結果と齲蝕罹患状態との間の相関係数は,カリオスタットとRDで高く,特にカリオスタット48時間値で高かったが,MSBBでは低かった.
    3.歯牙年齢別にみた齲蝕活動性試験結果と齲蝕罹患状態との間の相関係数は,齲蝕活動性試験法により異なっていた.カリオスタット48時間値使用時には,いずれの歯牙年齢においても,試験結果と齲蝕罹患状態との間に特に高い相関がみられた.
    4.すべての齲蝕活動性試験において,齲蝕活動性試験結果と1人平均C0,C1歯数との間の相関係数は高かった.
    5.齲蝕活動性試験結果と齲蝕現症との間の関連性は,齲蝕活動性試験法により異なり,また,歯牙年齢によっても異なっていた.
  • 第5報 母親の不安度と小児の歯科治療に対する適応性との関連
    中川 弘, 原田 桂子, 鎌田 浩二, 宮本 幸子, 有田 憲司, 西野 瑞穂
    1991 年 29 巻 2 号 p. 325-329
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    母親の不安度が小児の歯科治療に対する適応性にどのように影響するかを知る目的で,3~6歳の小児24名とその母親を対象に調査,分析を行った.母親の不安度は,状態・特性不安インベントリーを用いて,母親教室時および小児の歯科治療受診時に測定した.小児の歯科治療に対する適応性は,「全く不適応」から「全く適応」までの5段階評定を行った.結果は次のとおりであった.
    1)母親の状態不安は,2度目の来院である母親教室の時より数回目の来院である歯科治療受診時の方が低かった.特性不安は,母親教室時と歯科治療受診時とで差はなかった.
    2)母親の母親教室時の状態不安と特性不安および歯科治療受診時の状態不安と特性不安の中で歯科治療受診時の状態不安が最も小児の適応性に影響を与えることがわかった.
    3)5,6歳児より3歳児の方が母親の状態不安の影響を強く受けることがわかった.
  • 竹内 弘美
    1991 年 29 巻 2 号 p. 330-344
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯が永久歯より知覚が鈍いという理由を形態学的立場から明らかにすることを目的として,軸索特異蛋白の一つであるニューロフィラメントプロテイン(NFP)に対する抗血清を用いた免疫組織化学的手法により,ヒト乳歯歯髄の神経支配について検索した.
    ヒト乳歯歯髄には多数のNFP陽性神経が観察された.しかし,永久歯に比べると疎な神経分布を示し,また乳歯歯髄の象牙芽細胞下神経叢の発達は永久歯のものに比べ劣っていた.象牙芽細胞下神経叢より伸び出したNFP陽性を示す神経線維の中には,
    象牙芽細胞層に終止するものもあったが,大部分の神経線維は歯髄・象牙質境を越え,象牙前質に進入していた.さらに象牙質に進入する神経も認められた.象牙前質に進入する神経線維の数は比較的多く,その走行パターンは永久歯のものとほとんど同じであった.しかしながら,象牙前質内で樹枝状に複雑に分枝し,三次元的拡がりを示す神経線維は非常に少なく,しかも象牙質知覚受容に非常に重要な構築物と考えられているmechanoreceptive complexの形成が永久歯より不良であった.乳歯の知覚が永久歯より鈍い形態学的理由として,乳歯に分布する神経線維の数が相対的に少ないこと,および終末形成状態が永久歯に比べ不良であることが考えられた.
    また,乳歯は外界の反応に対して不規則第二象牙質が容易にかつ大量に形成されるという特質も乳歯の知覚発現を妨げる要因の一つであると思われた.
  • Caucasion小児において
    前田 隆秀
    1991 年 29 巻 2 号 p. 345-353
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口蓋の形態の増齢的変化を知ることは小児歯科臨床にとって重要である.形態の測定に際し常に成長発育を続ける小児において,経時的に不同な部位の特定は困難であり,基準点の設定には苦慮する.従来より,口腔模型上の基準点として,切歯乳頭部ならびに乳歯列期においては上顎第2乳臼歯口蓋側最深歯頸部,永久歯列期においては切歯乳頭部ならびに上顎第1大臼歯口蓋側最深歯頸部が多く用いられている.
    同一人の縦断資料にける口蓋の形態変化を比較検討する際,これらの基準点の位置的変化を捉えておかねばならない.著者は,トロント大学矯正学教室Burlington Growth Center所蔵の6歳0カ月,9歳0カ月,12歳0カ月,16歳0カ月の同一人の資料である側貌頭部X線規格写真と口腔模型より各年齢において正常咬合を有するカナダ白人男子26名,女子24名の経年側貌頭部X線規格写真200枚を用い,前述の基準点の増齢的な位置変化を,頭蓋,顎顔面との関係について検討を行ったところOra-M平面はS-N平面に対して増齢的に平坦となり,特に男子では12歳から16歳,女子では9歳から12歳においては顕著であり,思春期における性差が認められた.このことよりOra-M平面を基準面に用いると,たとえ口蓋等の形態に増齢的変化がなかったとしても形態に変化を生じたように観察されることがありうると考えられる.
  • 歯根破折歯の臨床経過について
    宮新 美智世, 宮崎 宣政, 松村 木綿子, 石川 雅章
    1991 年 29 巻 2 号 p. 354-361
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    外傷により歯根破折を生じた幼若永久歯10歯について長期的経過観察を行なった.患者は8名で,その初診時年齢は7歳から12歳までの範囲であった.初診時には歯の動揺が著しく,固定による歯の安静化をはかった.1歯においては,露髄を伴う歯冠破折を合併していたため抜髄し,後に根管充填と根尖側破折片の外科的除去とを行った.
    経過観察期間は2年2カ月から9年1カ月まで平均5年1カ月である.8歯(80%)において,歯髄生活反応の継続, 破折部の治癒, 正常な歯根の形成のほか, 歯髄腔狭窄が観察され,うち2歯には軽度の歯根吸収がみられた.1歯は後に歯髄生活反応が消失したため,歯冠側破折片に限局した歯内療法を要した.これら術後変化のほとんどは観察期間1年以内に観察された.
    以上の結果から,適切な治療と経過管理を行うことによって,外傷により歯根破折を被った幼若永久歯は,良好な状態で保存しうることがわかった.
  • 第1報 齲蝕発生要因に関する分析
    西野 瑞穂, 有田 憲司, 粟飯原 靖司, 阿部 敬典, 那須 邦子, 阿部 典子, 三木 真弓
    1991 年 29 巻 2 号 p. 362-372
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯齲蝕の罹患状況には地域差のあることが明らかにされており,地域における乳歯齲蝕の減少率を加速し,効果的に齲蝕を予防するためには最小のマンパワーで最大の効果をあげ得るような歯科保健プログラムが組まれ,データベースシステムで情報処理の高速化,高精度化をはかり,成績を測定,評価する必要がある.
    われわれは,独自に開発したデータベースシステムにより,1986年6月から徳島県名西郡石井町の乳幼児歯科保健管理を行っているが,本研究では1984年11月から1988年10月までの4年間に生まれた乳幼児1085人を対象に,保育環境,齲蝕罹患状況の年次推移ならびに齲蝕発生要因の分析を行った.得られた結果の主なものは次のとおりである.
    1)被験小児は第2子以上が55.8%で,平均同居家族数は5.1人,7人以上の家族は18.0%であった.祖父,祖母あるいは祖父母と同居しているものはあわせて56.0%,祖父母が近所に在住しているものは26.1%であった.
    2)1984年11月~1985年10月生まれのものに比較して,それ以後生まれたもので齲蝕の初発年齢の若年化がみられたが,1987年11月~1988年10月生まれのもので初発年齢は上がった.
    3)1歳6カ月,3歳,5歳の各年齢群で齲蝕発生に影響を与える主たる要因は異なったが,いずれの年齢群においても,プラークの付着状態,子供のカリオスタット48時間値,父親の職業,母親の職業,母親の齲蝕予防への関心ならびに同居家族数の6つの要因が上位10位以内に入っていた.
  • 第2報 齲蝕抑制効果の測定
    阿部 敬典, 阿部 典子, 三木 真弓, 那須 邦子, 伊勢 美雪, 西野 瑞穂
    1991 年 29 巻 2 号 p. 373-378
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1986年6月から開始した地域乳幼児歯科保健プログラムが有効に作用し,乳歯齲蝕の減少に影響を及ぼしているか,また幼児の生活習慣に改善がみられるかなどについて調査,分析し,次の結果を得た.
    1) 1歳6カ月から3歳までの間,6カ月毎の健康診査の回数が多いものほど,3歳時の齲蝕発生が抑制されていた.
    2) 1歳6カ月児健康診査時のみの歯科保健指導は,3歳時の齲蝕罹患者率の減少に影響を及ぼさなかった.
    3) 1歳6カ月時および3歳時の生活習慣に年次推移が認められた.
    4) 1歳6カ月時における生活習慣で,(1)離乳の未完了,(2)間食摂取時間の不規則,(3)間食摂取回数が1日3回以上,(4)母親による毎日の歯磨習慣がない,の4項目が3歳児の齲蝕発生に有意に関係していた.
    5) 齲蝕発生ハイリスク児のハイリスク判定3カ月後の受診率は低く,約25~50%であった.
  • 早崎 治明, 山崎 要一, 中田 稔
    1991 年 29 巻 2 号 p. 379-388
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の下顎前方滑走運動の特徴を明らかにするため, 複数の下顎任意点について三次元的に同時解析が可能な,下顎多点運動解析システムを用いて,ヘルマンの歯年齢II A(男児3名,女児6名),III A(男児2名,女児7名)の小児,および成人(男性9名)の前方滑走運動を計測し解析を加えた.
    解析点は,乳歯列では下顎切歯点,左右乳犬歯尖頭,左右第二乳臼歯遠心頬側咬頭頂,永久歯列では下顎切歯点,左右犬歯尖頭,左右第一大臼歯遠心頬側咬頭頂とした.また,運動を比較するため,咬頭嵌合位を始点とし,下顎切歯点部の移動距離が0.5mmから5.0mmまでを,0.5mmごとに区切り,各解析点ごとに解析を加え,その運動方向を矢状面,前頭面,水平面への投影角として表わした.
    また,それぞれの角度とオーバーバイト,オーバージェットとの相関を求めた.
    その結果,歯年齢II AおよびIII Aの小児では,成人より矢状面投影角が有意に小さく,下方への動きが少なく浅い運動をしていた.前頭面投影角は歯年齢II A,III A,成人と順次大きくなり,前方滑走時の左右への偏位が減少していた.また,歯年齢II Aの矢状面投影角では,オーバーバイト,オーバージェットと有意な正の相関が認められたが,歯年齢III Aでは,水平面投影角とオーバージェットと間で負の相関が見られ,オーバージェットが下顎の左右への偏位を規制していると考えられた.歯年齢III Aは,歯年齢II Aと成人の移行型と思われる運動をしていた.
  • 第2報 センサーの特性
    岡本 義正, 岡本 圭一, 篠田 圭司, 田村 康夫
    1991 年 29 巻 2 号 p. 389-395
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,Tスキャンシステムのセンサーの再現性と問題点について,第1報で顎模型を用いた基礎的実験を行ったことを報告した.さらに第2報では, 本システムのフォーススナップショットモードにおける, CRT画面上の咬合接触圧の表示が,一定の荷重により反応するものなのかを明らかにした.またこれらの計測値をもとに被検者を用い,筋電図で咬みしめる力を規定し,咬合接触圧を測定した.その結果,
    1)センサーにかかる荷重とCRT画面上に表示される圧レベルとの間には,一定の関係が認められた.これらの関係をもとに,咬合接触圧を定量化することが出来た.
    2)被検者に用いた場合,咬みしめる力を増すと,接触点数,咬合接触圧定量値が,共に増加することが認められた.さらにシリコン咬合接触検査材をコントロールとした場合,同様の傾向が認められた.
    3)DMF歯率の高い被検者では,咬みしめる力を増しても,接触点数,咬合接触圧定量値共に増加率が他の被検者に比べて低かった.
  • 富井 恵理子, 下岡 正八
    1991 年 29 巻 2 号 p. 396-419
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    実際の歯科治療場面で, 治療椅子上で小児患者が椅坐位で術者と対面して見た時と,仰臥位で術者を逆さに見た時とでは,見方にどのような年齢的な違いがあるかを知るために,術者の顔の正立像と倒立像の2つのテスト画像を作製し,ビジコンアイカメラ装置を用いて小児の眼球運動の測定を行い,分析検討し,次の結論を得た.>1.正立像では,鼻より上方から見始める者が多く,倒立像ではばらつきがあった.走査路は,正立像で目の他に頭部が,倒立像で目の他に下顔面を情報獲得の手がかりにしていた.>2.年齢が低い程,1部位を凝視する傾向にあり,全体の把握にも同様の傾向を示した.>3.年齢が高い程,顔の内部の特徴的な部位のみを走査することで顔の情報を得る傾向を示した.顔のどこに視点をおいても全体像が把握でき, 瞬時に顔を認知していることが示唆された.>4.小児には,一側性像位を認めた.>5.9歳以上のグループでは,倒立像を頭の中で回転させながら,正立像に重ね合わせているような方向性が認められた.>6.これらのことより,歯科治療場面において,椅坐位で歯科医師と対面した時と,小児を治療椅子上に,仰臥の状態にしたままで歯科医師との視覚的コミュニケーションをとる場合では,歯科医師の顔の認知の方法に年齢的差異があることがわかった.
  • 鈴木 善子, 福田 理, 柳瀬 博, 荻田 修二, 河田 典夫, 鈴木 裕仁, 黒須 一夫
    1991 年 29 巻 2 号 p. 420-427
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の歯磨き指導は,各人の心身発達段階を考慮して行うことが重要である.そこで,小児の基本的生活習慣の自立および手指の運動機能の発達状況を調査し,歯磨き能力と関連の深い要因を検索するため,1988年11~12月の2カ月間に名古屋市とその近郊の保育所,幼稚園に通う1~6歳の園児の母親を対象に, 「園児の歯磨き習慣と基本的生活習慣」に関する質問調査を行い,以下の結果を得た.
    1. 基本的生活習慣の着脱衣,排泄の習慣に関しては4歳前後で自立する傾向がみられるが,清潔,食事の習慣に関してはやや遅くなる傾向がみられた.
    2. 3歳児の歯磨き能力と関連する要因は,「一人で洗髪ができる」,「一人で顔が洗える」,「一人で靴下をはくことができる」, 「箸を使って豆のような物をつまむ」の4項目であった.
    3. 4歳児の歯磨き能力と関連する要因は,「一人で顔が洗える」,「スプーンと茶碗を両手に持って食べる」,「紐を結んだりほどいたりできる」の3項目であった.
    4. 5・6歳児の歯磨き能力においては,基本的生活習慣との関連は認められなかった.
  • 長谷川 浩三, 中澤 直美, 外木 徳子, 町田 幸雄
    1991 年 29 巻 2 号 p. 428-438
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    上顎正中過剰歯の発現率や位置の変化あるいは発育状態などを知るためにはできるだけ低年齢時から経年的に観察する必要がある.そこで本研究は同一小児について3歳より上顎正中過剰歯を経年的に観察し,その発育状態,歯根の吸収状態,過剰歯の位置の変化ならびに乳歯,永久歯に与える影響などを調査した結果, 以下の結論を得た.
    1)3歳時より永久歯列期に移行した152名の小児の全歯牙の部位について調査したところ,過剰歯の認められたものは男児5名,女児2名の計7名で,いずれも上顎正中過剰歯でその発現率は4.6%であった.
    2)7例中1例が2歯過剰歯で,他はすべて1歯過剰歯であった.埋伏状態は3歳時において8歯中2歯が順生埋伏,6歯が逆生理伏であった.このうち順生理伏の2歯と逆生埋伏であった1歯は6歳頃より方向を転換し順生となり出齦した.
    3)3歳時に過剰歯の歯根が完成していたのは1歯であり,その他は3歳時において歯根は未完成であった.歯根未完成歯のうち観察期間中抜歯した2例を除き,他の5例は6歳から7歳に歯根の完成が認められた.
    4)正常な乳歯,永久歯の歯根発育時期から過剰歯を分類すると,3歳時において歯根の完成していた症例は乳歯の過剰歯であると考えられる.これに対して6歳~7歳で歯根が完成した症例は永久歯の過剰歯であると考える.
    5)観察期間中過剰歯の位置に変化が認められたものは6歯であり,歯軸の角度変化のみ認められたもの2歯,上方あるいは下方への移動が認められたもの4歯であった.
    6)過剰歯の歯根吸収については,乳歯過剰歯と判定した1例は,歯根全体が吸収消失していた.これに対し,永久歯過剰歯と判定した症例の吸収は,すべて極く一部に留っていた.
    7)上顎正中過剰歯による乳歯や永久歯あるいは歯列,歯槽部への影響は一時的に現われるが,経年的に観察すると軽度で特にその後大きな障害は認められなかった.
    8)本調査症例において混合歯列期中に存在した正中離開は,永久歯列においては全て閉鎖した.
  • 久芳 陽一, 小笠原 靖, 副島 嘉男, 本川 渉
    1991 年 29 巻 2 号 p. 439-446
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    上顎正中部に左右の区別のつかない単一乳中切歯と上唇小帯の消失, 口蓋の異常などを伴う5歳2カ月男児の症例を報告した.1年3カ月後,上顎単一乳中切歯を抜歯し,研磨標本観察をおこなったが,癒合歯を思わせるような所見は認められなかった.また萌出してきた後継永久歯も単一永久中切歯であった.
    歯牙の異常以外に,上唇小帯の消失,正中口蓋縫線上に硬口蓋後方におよぶ著明な肥厚および鼻疾患の既往などがあることから,これらの異常所見は口腔,鼻などの顔面正中部に限局していた.
  • 松山 順子, 富沢 美恵子, 野田 忠, 鈴木 誠, 福島 祥紘
    1991 年 29 巻 2 号 p. 447-458
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    新潟大学歯学部附属病院小児歯科外来において,下顎第一大臼歯の萌出遅延をきたした歯原性腫瘍の4症例を経験し,次のような臨床的所見および病理組織学的所見を得た.
    1)患児の年齢は8歳8カ月から13歳2カ月で,男児3例,女児1例であった.4症例ともに 6の萌出遅延を認めた.
    2)口腔内所見では,4症例ともに 6相当部の歯肉には,発赤,腫脹などの所見は認められなかった.
    3)X線写真所見では,いずれも埋伏した 6と,その歯冠周囲に境界明瞭な透過像がみられ,内部に不規則な不透過像を認めた.不透過像の大きさと石灰化の程度は症例により差が認められた.
    4)病理組織学的には,エナメル上皮線維歯牙腫,複雑型歯牙腫,歯原性線維腫,エナメル上皮線維象牙質腫の診断を得た.
    5)処置方法は,4症例とも埋伏した 6を保存して腫瘍のみ摘出した.手術後6は萌出または萌出傾向を認め経過は良好であり,現在まで腫瘍の再発は認められない.
  • 三木 真弓, 清水 謙, 寳田 貫, 西田 文彦, 安富 豊, 木下 史代, 西野 瑞穂
    1991 年 29 巻 2 号 p. 459-467
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    不正咬合を主訴として8歳7カ月時に来院したSchwartz-Jampel症候群の女児症例について,全身的,局所的に検討を加え次の所見を得た.全身的には(1)短躯,(2)眼裂縮小と小さい口を伴う特異な顔貌,(3) 股,膝,肘,手関節の拘縮と運動制限,(4)歩行困難,(5)知能正常,(6)血液検査でMCV,MCHのやや低値;CPK,LDHの上昇;IgA,IgGの低値などが認められた.顎口腔領域では,(1)上下顎骨,とくに上顎骨の著しい劣成長と正常範囲内の歯の大きさとによる著しい不正咬合,(2)歯数不足はない,(3)高口蓋,(4)下顎頭,下顎窩に形態異常はなく,開口時に下顎頭の前方滑走も十分行われている,(5)筋突起が関節突起より長く,Antegonial Notchがやや大きい,(6)側頭筋前腹ならびに咬筋で安静時にも,咀嚼時のInterval期間中にもcontinuous muscle activityが認められる,(7)咀嚼リズムが著しく不安定である,などの所見が認められた.
    Schwartz-Jampel症候群の本症例はきわめて特異な顎口腔所見を呈するため,顎発育,咀嚼筋活動,顎運動,顎関節などの状態を十分に観察しながら,可及的望ましい永久歯列の完成を誘導する必要のあることが明らかになった.
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