小児歯科学雑誌
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上顎正中過剰歯の経年的観察
長谷川 浩三中澤 直美外木 徳子町田 幸雄
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1991 年 29 巻 2 号 p. 428-438

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抄録

上顎正中過剰歯の発現率や位置の変化あるいは発育状態などを知るためにはできるだけ低年齢時から経年的に観察する必要がある.そこで本研究は同一小児について3歳より上顎正中過剰歯を経年的に観察し,その発育状態,歯根の吸収状態,過剰歯の位置の変化ならびに乳歯,永久歯に与える影響などを調査した結果, 以下の結論を得た.
1)3歳時より永久歯列期に移行した152名の小児の全歯牙の部位について調査したところ,過剰歯の認められたものは男児5名,女児2名の計7名で,いずれも上顎正中過剰歯でその発現率は4.6%であった.
2)7例中1例が2歯過剰歯で,他はすべて1歯過剰歯であった.埋伏状態は3歳時において8歯中2歯が順生埋伏,6歯が逆生理伏であった.このうち順生理伏の2歯と逆生埋伏であった1歯は6歳頃より方向を転換し順生となり出齦した.
3)3歳時に過剰歯の歯根が完成していたのは1歯であり,その他は3歳時において歯根は未完成であった.歯根未完成歯のうち観察期間中抜歯した2例を除き,他の5例は6歳から7歳に歯根の完成が認められた.
4)正常な乳歯,永久歯の歯根発育時期から過剰歯を分類すると,3歳時において歯根の完成していた症例は乳歯の過剰歯であると考えられる.これに対して6歳~7歳で歯根が完成した症例は永久歯の過剰歯であると考える.
5)観察期間中過剰歯の位置に変化が認められたものは6歯であり,歯軸の角度変化のみ認められたもの2歯,上方あるいは下方への移動が認められたもの4歯であった.
6)過剰歯の歯根吸収については,乳歯過剰歯と判定した1例は,歯根全体が吸収消失していた.これに対し,永久歯過剰歯と判定した症例の吸収は,すべて極く一部に留っていた.
7)上顎正中過剰歯による乳歯や永久歯あるいは歯列,歯槽部への影響は一時的に現われるが,経年的に観察すると軽度で特にその後大きな障害は認められなかった.
8)本調査症例において混合歯列期中に存在した正中離開は,永久歯列においては全て閉鎖した.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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