抄録
新潟大学歯学部附属病院小児歯科外来において,下顎第一大臼歯の萌出遅延をきたした歯原性腫瘍の4症例を経験し,次のような臨床的所見および病理組織学的所見を得た.
1)患児の年齢は8歳8カ月から13歳2カ月で,男児3例,女児1例であった.4症例ともに 6の萌出遅延を認めた.
2)口腔内所見では,4症例ともに 6相当部の歯肉には,発赤,腫脹などの所見は認められなかった.
3)X線写真所見では,いずれも埋伏した 6と,その歯冠周囲に境界明瞭な透過像がみられ,内部に不規則な不透過像を認めた.不透過像の大きさと石灰化の程度は症例により差が認められた.
4)病理組織学的には,エナメル上皮線維歯牙腫,複雑型歯牙腫,歯原性線維腫,エナメル上皮線維象牙質腫の診断を得た.
5)処置方法は,4症例とも埋伏した 6を保存して腫瘍のみ摘出した.手術後6は萌出または萌出傾向を認め経過は良好であり,現在まで腫瘍の再発は認められない.