1991 年 29 巻 3 号 p. 614-618
この研究の目的は,思春期の顎関節症患者の顎関節部に対して,前額断断層FCR撮影を用いることが,診断学的に有効であるかを検討することであった.前額断断層FCR撮影の診断学的有効性は矢状断断層FCR撮影との比較により検討され,以下の結果が得られた.1.前額断断層FCR撮影により下顎窩に対する下顎頭の位置および下顎頭の骨変化の診断は可能であった.しかし,関節円板の転位は診断不可能であった.2.前額断断層FCR撮影による診断と矢状断断層FCR撮影による診断との比較を行った結果,下顎窩に対する下顎頭の上下的位置の一致率は84.2%,下顎頭の骨変化の一致率は81.6%であった.以上の結果より,断層FCR撮影による顎関節部の診断は矢状断断層FCR撮影のみで十分可能であると考えられた.