小児歯科学雑誌
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単クロン抗体を用いた酵素抗体法の齲蝕活動性試験への応用(第1報)
安富 豊松田 洋子宮崎 寿次中村 務弘田 克彦福井 公明太田 房雄西野 瑞穗
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1992 年 30 巻 1 号 p. 186-193

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抄録
Streptococcus mutans(血清型c,e,f)に特異的に反応する単クロン抗体を作製し,この単クロン抗体を用いた酵素抗体法によりS. mutansを特異的,かつ迅速,簡便に検出定量する新しい齲蝕活動性試験を開発した。本論文では,まず,作製した単クロン抗体f-89(MAbf89)の各種口腔内連鎖球菌に対する反応特異性を示し,次に,このMAbf89を用いた酵素抗体法によって,標準検体および臨床検体中のS. mutansを検出定量するとともに,従来より行われている齲蝕活動性試験,カリオスタット法およびMSBB法と比較検討したので報告する。
2.0~5.0歳児98名を対象として,上顎臼歯部頬側面から歯垢を採取し,臨床検体とするとともに,口腔内検診を行いdmf歯数を得た。
得られた結果は次のとおりであった。
1.MAbf89はS. mutans(c,e,f)以外のミュータンス群連鎖球菌およびその他の口腔内連鎖球菌とはほとんど交叉反応を示さずS. mutansにきわめて高い特異性を有していた。
2.S. mutans標準検体について得られたMAbf89を用いた酵素抗体法による測定値は,CFU値と高い正の相関性を有し,検出限界はほぼ5×104CFU/mlであった。
3.臨床検体について得られた酵素抗体法による測定値とコロニーを抗体染色すること(IBT変法)により得られたCFU値との間には高い正の相関性がみられた。
4.臨床検体について得られた酵素抗体法による測定値と,カリオスタット法によるpH値およびMSBB法によるスコアとの間にはそれぞれ正の相関性がみられ,カリオスタット法よりMSBB法に,より高い正の相関性が認められた。
5.臨床検体について得られた酵素抗体法,カリオスタット法およびMSBB法によるスコアとdmf歯数との間には, t 検定で酵素抗体法では, + と+ + , + と〓の間に有意差(p<0.05) , カリオスタット法では, + と+ + , + と〓の間に有意差(p<0.01) ,M S B B 法では, -と+ + , + と+ + , + と〓の間に有意差(p<0.05) , - と〓の間に有意差(p<0.01)が認められた。
以上の結果から,われわれが開発中の単クロン抗体f-89を用いた酵素抗体法は,今後改良を加えることにより齲蝕活動性試験として十分臨床応用できるものと考えられた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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