小児歯科学雑誌
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好酸球性肉芽腫の1症例
黒川 泉保科 学松井 大介鈴木 広幸小林 雅之下岡 正八
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1992 年 30 巻 1 号 p. 224-231

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抄録

好酸球性肉芽腫は,細網内皮系の中でも組織球性細胞の増殖を主体とし,好酸球の浸潤を伴う肉芽腫性病変である。Letterer-Siwe病,Hand-Shuller-Christian病とともに同一疾患の異なる病型であるとして,Histiocytosis Xと呼ばれている。年長の小児に好発し,顎骨は好発部位である。歯周疾患の炎症反応や悪性腫瘍と類似しているため,ほかの疾患との鑑別が難しく,確定診断には病理組織学的所見が必要である。処置は,病巣の進行度により異なっている。予後は一般に良好であるといわれているが,Histiocytosis Xの他の病型に移行したり,再発した場合,原発巣よりさらに病巣が広がることもある。
今回,右側頬部腫脹を主訴として来院した3歳5カ月の女児で,右側下顎骨に単発で発生した好酸球性肉芽腫を経験した。全身所見,歯科的所見,ならびに臨床経過に関して検索を行った結果,以下のような知見を得た。
1)初発症状は,炎症所見に類似しており,X線所見では悪性腫瘍を疑う像が認められた。病理組織所見より,組織球性細胞を主体とし好酸球,巨細胞が認められ,好酸球性肉芽腫の診断を受けた。
2)末梢血液における分画は,すべて正常値内であった。
3)化学療法により治癒し,5年経過した現在,再発もなく良好である。しかし,病巣は永久歯胚を含んでおり,治癒後萌出した第一大臼歯に形成不全が認められた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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