抄録
本研究は,歯科に対する不安の強い小児患者を事前にスクリーニングする目的で,著者らのこれまでの疫学調査結果をもとに質問紙法による評定尺度を考案した。質問紙は,保護者用と子供用の2種類で,回答・記入は保護者が行った。そしてその評価を行うべく,まず本質問紙の信頼性と妥当性の検討を行い,つぎに質問紙の回答結果と患児の口腔内状態および患児の歯科治療時の行動(情動と体動)との関連性についての検討を行い,以下の結果を得た。
1.本質問紙法の有効性について検討を行い,高い信頼性と妥当性を得た。
2.患児の歯科不安は母親の不安や患児の歯科治療経験に誘発される可能性が強く,臨床的にも問題となることが示された。
3.心拍数は不安度の増大に伴い変化率の上昇を認め,皮膚温は低不安群に比べ高不安群の方が変動が大きかった。
4.体動に関しては,手足において高不安群の方が表出率が高く,頭顔面部より手や足のほうが不安の兆候となる動きが表出されていることが示唆された。
以上より,本質問紙から推察された不安度により低不安群と高不安群の患児の口腔内状態の特徴や治療時の行動特性を示し得た。すなわち,今回考案した歯科不安に関する質問紙が歯科不安を測定する尺度として有効であり,歯科不安の強い患児を事前にスクリーニングするのに有用であることが示唆された。