抄録
現在までに,多くの齲蝕活動性試験が個人の口腔内の状態の把握や,将来の齲蝕発生を予測するために開発されてきた。本研究では,齲蝕活動性試験のひとつであるカリオスタットの乳歯隣接面齲蝕の早期発見ならびに予防のためのスクリーニングテストとしての有効性を検討した。対象者は,本学小児歯科を受診した58名の患児(2-8歳:平均年齢4.3歳)であった。通常の口腔内検診で両隣接面共に健全と診断された77乳歯隣接面から市販フロスを用いてプラークを採取し,カリオスタット試験液に投入した。その試験液を37℃ で48時間培養後色見本を参照して色判定し,隣接面の齲蝕活性度とした。また,隣接面齲蝕の診断には,咬翼法エックス線法を併用した。
以上より次の結果が得られた。(1) 各乳歯隣接面の齲蝕活性度は〓〓〓で高く上下顎共齲蝕罹患率と同じパターンを示した。(2) 齲蝕に罹患している乳歯隣接面の齲蝕活性度の平均値は,1.6±0.4(S.D.)で健全な乳歯隣接面では1.0±0.2(S.D.)となり齲蝕罹患部位の隣接面の方が有意に高かった。(p<0.001)(3) 各乳歯隣接面を齲蝕活性度別に分類し,それぞれの齲蝕罹患率を求めると齲蝕活性度が高い程,齲蝕罹患率も高かった。(4) カリオスタットの乳歯隣接面齲蝕のスクリーニングテストとしての有効度を特異度,敏感度を算出して検討すると2-5歳児では,齲蝕活性度1.5の時,最大有効度を示し,6歳児では,2.0の時であった。