1992 年 30 巻 5 号 p. 1011-1016
萌出途上にある幼若永久歯の小窩裂溝填塞剤として,リン酸四カルシウム(4CP)にフッ化物を配合したものを粉末としたセメントを試作し,理工学的性質およびエナメル質におよぼす影響について検討した。フッ化物としては,フッ化カルシウムまたはフッ化ストロンチウムを用いた。硬化液はリンゴ酸15.0wt%,ポリアクリル酸30.0wt%(数平均分子量5000),およびトリカルバリル酸5.0wt%の混合液を用いた。4CPセメントにいずれのフッ化物を配合しても,硬化時間は延長し,圧縮強度は低下し,崩壊率は増加した。フッ化カルシウムでは30%まで,フッ化ストロンチウムでは2%まで配合した4CPセメントは,硬化時間と圧縮強度についてのカルボキシレートセメントのADA規格(No.61)を満たしていた。フッ化カルシウムを2または30%,またはフッ化ストロンチウムを2%配合した4CPセメントを用いて牛歯エナメル質中へのフッ素の取り込み量を測定した結果,いずれのセメントからもフッ素が取り込まれていることが判明した。