小児歯科学雑誌
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脳性麻痺者の歯列,口蓋の形態と顔面形態との関係について
とくにフーリエ級数を応用して
土肥 順尚長澤 篤水柿 文子辺見 敏代宮内 充子川島 成人大西 敏雄岡田 玄四郎鬼満 雅近藤 政子赤坂 守人
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1992 年 30 巻 5 号 p. 1017-1024

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抄録
脳性麻痺者は,筋の発育障害,筋協調運動の異常により各種の機能障害をもつことが多く,このことがさらに骨格的な形態に影響を及ぼしている。従来,脳性麻痺者は顔面の変形,歯列弓並びに口蓋の形態異常が多いことが報告されているが,この三つの関係について検討した報告は見られない。そこで今回は,脳性麻痺者の顔面の変形状態と歯列および口蓋形態との関係を検討するため,脳性麻痺者19名を被験者に,さらに顔面の変形を有する脳性麻痺者7名と,顔面の変形のみられない脳性麻痺者12名とに分類し,対照として顔面の変形のみられない健常者の成人7名より採得した上顎石膏模型を資料にした。そして,歯列弓形態と口蓋形態との関係については距離的測定のほか,定量的に分析できるフーリエ級数を応用し観察したところ,以下の知見を得た。
1.健常者では,歯列弓形態と口蓋の浅層約1/4の領域との間に有意な相関を認めた。
2.脳性麻痺者全体では,歯列弓形態と口蓋の浅層から約3/4までの領域との間に有意な相関を認めた。
3.顔面の変形のみられない脳性麻痺者では,歯列弓形態と口蓋の浅層から約1/2までの領域との間に有意な相関を認めた。
4.顔面の変形を有する脳性麻痺者では,歯列弓形態と口蓋の浅層から約3/4までの領域との間に有意な相関を認め,変形を有する者は変形がみられない者より歯列弓形態が口蓋の深部まで影響を及ぼしていると推察された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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