小児歯科学雑誌
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乳臼歯隣接面齲蝕の発生に関する研究
咬翼法エックス線写真による罹患状況と関連要因について
井上 美津子
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1992 年 30 巻 5 号 p. 925-946

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抄録

低年齢児における乳臼歯隣接面齲蝕の発生状況と, それに関連する要因について知る目的で,来院した3歳児302名を対象に調査を行った。乳臼歯隣接面齲蝕の検出には,咬翼法エックス線写真を用いた。また,関連要因としては口腔内・外の諸要因から21項目を選び,これらを3群に分け,乳臼歯隣接面齲蝕発生との関連について数量化分析を用いて検討した。その結果,以下の結論を得た。
1)咬翼法エックス線診査の結果,第1,第2乳臼歯隣接面の50.7%に何らかの透過像が認められ, また, 対象とした3歳児302名中233名(77.2%) に乳臼歯隣接面齲蝕の発生が認められた。
2)歯種, 歯面別に隣接面齲蝕の発生状況をみると,上顎乳臼歯より下顎乳臼歯, 第2 乳臼歯より第1乳臼歯の発生率が高かった。
3) 乳臼歯隣接面相互間には, 齲蝕の有無に関して高い一致率が認められ,また齲蝕の有無および程度に関して,すべての歯面間に有意な関連が認められた。
4)すでに他部位に平滑面齲蝕を有している小児では,90%以上の高率で乳臼歯隣接面齲蝕の発生が認められた。
5)口腔内・外の諸要因と乳臼歯隣接面齲蝕との関連を, 数量化I 類およびII類を用いて分析した結果,現在の口腔環境にかかわる要因群の重相関係数が最も高い値を示し,特に「甘味物の摂取状況」と「カリオスタット値」の関与が大きいことが示された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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