抄録
本教室で考案した‘Occlusogram’を用い,成長に伴う上下顎対合関係の変化を観察することで,小児歯科臨床における本方法の有用性について検討を行った.
被験者には個性正常咬合を有する乳歯列期,混合歯列前期,混合歯列後期各14名,永久歯列期15名の計57名を用いて計測した.つまり各歯列期におけるOcclusogramを作成し,距離計測,角度計測,ターミナルプレーン量,オーバージェット,歯列長径・幅径を検討した.
その結果,OcclusogramによりOCR(Occlusogram Real),OCP(Occlusogram Profile),OCC(Occlusogram Real with Occlusal Contacts)の3種で異なった観察が行え,咬合平面上における上下顎の対合関係の観察が可能となった.歯列群別に成長による歯列および上下顎対合関係の変化を検討した結果,
1)上下顎とも歯列弓幅径は有意に増大し,歯列の成長に伴い歯列弓長径は減少していた.
2)上下顎とも切歯点から臼歯点までの距離は歯列の成長に伴い有意に増大していた.
3)歯列の発達により上顎臼歯点と比較して下顎臼歯点は有意に近心に移動していた.
4)上顎切歯点を基準として上下顎の犬歯は遠心頬側方向に移動し,上下顎の臼歯点は近心頬側方向に相対的に移動していた.
以上の結果より,Occlusogramは視覚的ならびに定量的な評価が可能であり,歯科臨床上,特に咬合誘導の診査・診断に有効であることが示唆された.