抄録
乳歯列期の機能的反対咬合症例10名(平均年齢3歳8ヵ月,平均治療期間1年2カ月)を対象とし,反対咬合治療前後における上下顎対合関係の変化と,また個性正常咬合を有する乳歯列期小児14名(平均年齢4歳11ヵ月)をコントロール群として両群の比較検討を行った.
分析には本教室で開発した咬合分析装置"Occlusogram"を用いて上下顎犬歯点・臼歯点の相対的位置関係について計測を行い,さらに左右側下顎歯列臼歯点の治療前後の差および左右差,左右下顎臼歯点を結ぶ線のなす角度の差について計測し上下顎関係の改善状態について検討した.
その結果,下顎歯列が咬合調整により機能的に後退している様子が確認でき,一方上顎歯列弓長径が治療後では有意に増大していたことから上顎歯列は下顎のインターロックにより成長が抑制されていたと考えられた.また上顎に対して下顎歯列が単に機能的早期接触により近心位をとるだけでなく下顎のローテーションを伴っていることが明らかとなった.