小児歯科学雑誌
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乳臼歯・髄床底部の副根管に関する研究(第2報)-根分岐部と髄床底部における副根管の比較-
後藤 讓治張 野細矢 由美子
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1993 年 31 巻 3 号 p. 496-509

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抄録

インド人小児乾燥頭蓋骨10顆の下顎骨より得た健康な乳臼歯39歯を用い,根分岐部の副根管についてSEMによる観察を行った.その結果を同一試料を用いて行った乳臼歯髄床底部における副根管の状況(既報)と比較して,以下の知見を得た.
1)乳臼歯根分岐部の副根管は,下顎骨10症例中の9症例(90%)に,また,被検歯39歯中の33歯(84.6%)に総計182個(第1乳臼歯73個,第2乳臼歯109個)認められた.この値は,乳臼歯髄床底部の副根管の発現よりかなり多く,両者間には有意差が見られた(P<0.01).
2)乳臼歯根分岐部に副根管を有する歯牙に対する1歯あたりの副根管の発現個数は,最大20個,最小1個,平均5.5個であった.この値は,髄床底部の平均値である2.8個の約2倍であった.
3)乳臼歯根分岐部における副根管は,根分岐部の中央中心部において高頻度に発現した.この傾向は髄床底部の場合と同様であった.
4)根分岐部副根管の開口部の内径は,第1乳臼歯では最大240μm,最小13μm,平均76.1μmであり,第2乳臼歯では最大300μm,最小19μm,平均96.1μmであった.これらは,髄床底部副根管開口部の内径平均値(第1乳臼歯45.4μm,第2乳臼歯37.3μm)より大きく,両者間には有意差が見られた(P<0.01).
5)根分岐部副根管の開口部の形態は,髄床底部のものと同様で,円形のものが95個(52.2%)と最も多く見られた.
6)根分岐部の副根管は,同一個体の左右同名歯に発現する傾向があった.また,その発現には個体差があり,多数歯に存在する場合と全く存在しない場合があるように思われた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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