抄録
開咬患者の舌運動機能解析を行うことを目的として,正常咬合を有する小児10名,開咬を有する小児10名を対象に,小型圧力変換器を用いた圧の測定と超音波診断装置による舌運動の観察を行い,以下の結果を得た.
1.唾液嚥下時,ジュース5ml嚥下時に見られる圧波形変化は7タイプに分類できた.
2.意識的唾液嚥下時,ジェース5ml嚥下時の最大圧の発現順序は,中切歯唇面,切歯乳頭部,口蓋最深部の順で,圧の時間的移動が嚥下に必要であることを示した.また,開咬群では特有の発現順序が認められた.
3.意識的唾液嚥下時の圧変化については両群に大きな違いはないが,開咬群では舌を前方に突出させる傾向があり,ジュース5ml嚥下時では,開咬群の口蓋最深部において一過性に大きな口腔内陰圧を示した.
4.ジュース50ml嚥下時の口蓋最深部に加わる圧は,正常群では正の圧が,開咬群では負の圧が大きく働き,一方ゼリー摂取時の負の最大圧は両群間に差はなく,開咬群では食品の物性にかかわらず,嚥下の主体は口腔内陰圧であった.
5.エコーの画像解析の結果,安静位において正常群では香は口蓋に接する様な高い位置にあり,開咬群では低位にあった.また開咬群では正常群に比べ,舌運動が緩慢であった.
6.舌運動機能の分析にとって,圧の測定と超音波診断装置による舌運動の観察を同時に行うことは,有効であることがわかった.