小児歯科学雑誌
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31 巻 , 5 号
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  • 日本小児歯科学会
    1993 年 31 巻 5 号 p. 817-827
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯の健康管理法の確立を目指している日本小児歯科学会は,その第一歩として,第一大臼歯の保護を目的に,幼若第一大臼歯の実態調査を行った.調査は全国29大学の小児歯科,11の小児歯科専門医および1小学校において行われ,4821人の小児の18488本の第一大臼歯が調べられた.
    第一大臼歯は小学校入学前の就学前1年において,既に約25%が齲蝕を経験し,その後増加して小学6年生では約80%にも達する.一人平均でも小学6年生では約3本の齲蝕ないし処置歯を持っている.
    第一大臼歯4歯が健全であるものは,就学前1年で約54%であるが,6年生では約11%に減少する.
    処置ではシーラントが早期から施され,これにより齲蝕の重症化が防げていると思われる.
    萌出初期から齲蝕に罹患しているものが存在し,萌出が進むにつれて齲蝕が増加する.萌出度が同じでも,学年が高いもののほうが齲蝕経験率が高い.また,就学前に萌出が完了したものでは,上顎で約35%,下顎で70%近くが齲蝕経験を持つ.
    乳歯齲蝕との関連では,乳歯齲蝕の経験歯数が多いものの方が,第一大臼歯の齲蝕経験歯数が多い.他の永久歯の齲蝕との関連では,第一大臼歯の齲蝕経験歯数の多いものに,他の永久歯の齲蝕が多い傾向がみられた.
  • 細矢 由美子, 後藤 譲治
    1993 年 31 巻 5 号 p. 828-836
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンの経時的色調変化について明らかにする事を目的に本研究を行った.
    直径10mm,厚さ1mmのレジンディスクをSilux Plus(3M社)を用い,厚さ1mmのガラス板を介して2分間光照射して作製した.レジン色は,U,Y,DY,L,G,UO,YOの7色を用いた.試料を37℃ の人工唾液中に浸潰し,硬化直後と以後6ヵ月ごとに3年後までの色調を高速分光光度計を用いて測色した.測色は,背景色なしの場合と背景色が裏装材を想定して作製した白色板の場合について行った.
    1)ΔE*ab値は,背景色なしの場合には,GとYO以外のすべてのレジン色が,硬化直後より3年後まで経時的増加を示した.一方,背景色が白色板の場合には,すべてのレジン色が,硬化直後より3年後まで経時的増加を示した.
    2)背景色なしの場合のΔE*ab値は,1年後は,1.59(YO)-2.67(L),2年後は,3.28(DY)-4.94(L),3年後は,3.82(YO)-6.06(L)の範囲で変化した.
    3)背景色が白色板の場合のΔE*ab値は,1年後は,2.28(YO)-3.32(L),2年後は,4.19(YO)-5.70(L),3年後は,4.91(YO)-7.04(L)の範囲で変化した.
  • 大西 暢子
    1993 年 31 巻 5 号 p. 837-849
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    開咬患者の舌運動機能解析を行うことを目的として,正常咬合を有する小児10名,開咬を有する小児10名を対象に,小型圧力変換器を用いた圧の測定と超音波診断装置による舌運動の観察を行い,以下の結果を得た.
    1.唾液嚥下時,ジュース5ml嚥下時に見られる圧波形変化は7タイプに分類できた.
    2.意識的唾液嚥下時,ジェース5ml嚥下時の最大圧の発現順序は,中切歯唇面,切歯乳頭部,口蓋最深部の順で,圧の時間的移動が嚥下に必要であることを示した.また,開咬群では特有の発現順序が認められた.
    3.意識的唾液嚥下時の圧変化については両群に大きな違いはないが,開咬群では舌を前方に突出させる傾向があり,ジュース5ml嚥下時では,開咬群の口蓋最深部において一過性に大きな口腔内陰圧を示した.
    4.ジュース50ml嚥下時の口蓋最深部に加わる圧は,正常群では正の圧が,開咬群では負の圧が大きく働き,一方ゼリー摂取時の負の最大圧は両群間に差はなく,開咬群では食品の物性にかかわらず,嚥下の主体は口腔内陰圧であった.
    5.エコーの画像解析の結果,安静位において正常群では香は口蓋に接する様な高い位置にあり,開咬群では低位にあった.また開咬群では正常群に比べ,舌運動が緩慢であった.
    6.舌運動機能の分析にとって,圧の測定と超音波診断装置による舌運動の観察を同時に行うことは,有効であることがわかった.
  • 旭爪 伸二, 旭爪 嘉代子, 松田 聡, 花田 圭子, 宮内 朋子, 田口 貴嗣, 井戸 菊夫, 渡辺 達夫, 笠原 浩
    1993 年 31 巻 5 号 p. 850-858
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児240名(1-5歳)を対象に,歯科診療台の真上の天井TVが,歯科診療時に小児に対してどのような影響を与えるかを質問紙法を用いて調査した.
    その結果,
    1.初診群60名を対象に調査した.入室前より関心を示しはじめ,診療台上のトレーニング時には「全部見た」76.7%,「半分以上見た」13.3%,合計90%の小児が強い関心を示し,終了まで66.7%が持続的に関心を示した.
    2.歯科治療時の天井TVへの関心度を,天井TV使用群120名について調査した「全部見た」42.5%,「半分以上見た」50%,合計92.5%が強い関心を示した.
    3.天井TV使用群120名と非使用群60名について協力状態について比較した.局所麻酔時と歯牙切削および歯冠修復時に,天井TV使用群の方が,容易群が5-7%多かった.治療中に終始,容易な状態であった小児の比較でも約10%多かった.しかし,有意差は見られなかった.
    4.以上から,天井TVの使用により,初診時,診療時ともに90%以上の小児が天井TVに強い関心を示し,術者およびアシスタントにとって行動管理上有用であることが示唆された.しかし,非使用群との診療時の協力状態の比較では,わずかながら良好となる傾向が見られたものの有意差は無かった.
  • 菊池 元宏, 赤坂 守人
    1993 年 31 巻 5 号 p. 859-869
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らはより簡便な方法で臨床への応用ができる下顎運動6自由度測定装置の可能性を検討したところ,以下の結論を得た.
    1.磁気を利用した下顎運動6自由度測定装置が開発された.
    2.本装置は座標値を1/10mm単位,角度値を1/100.単位で表示可能である.
    3.本装置は従来の6自由度を測定できる下顎運動測定装置と比較し,本体・センサ共に小型であり,下顎運動の6自由度測定が臨床の場で行える見通しが得られた.
  • 西田 郁子, 牧 憲司, 森本 彰子, 橋本 敏昭, 今村 隆子, 児玉 昭資, 赤嶺 秀紀, 名越 恭子, 木村 光孝
    1993 年 31 巻 5 号 p. 870-878
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回,著者らはC2を有する乳臼歯25本,幼若永久臼歯25本の隣接面窩洞に対し,GRAFT LC IIを用いて修復し,臨床的に観察し,以下のような結果を得た.
    1.乳臼歯,幼若永久臼歯ともに修復後1週間という早い時期より辺縁にステップがみられたが,1年経過して辺縁適合性に何ら異常のみられないものはどちらも23例(92.0%)であった.
    2.1年経過後,乳臼歯,幼若永久臼歯ともに形態変化が生じたものは1例であった.特に幼若永久臼歯では全体的に変化がみられた.
    3.乳臼歯,幼若永久臼歯ともに修復後1週間より着色,変色を認め,1年経過して何ら異常の認められなかったものは23例(92.0%)であった.
    4.辺縁部の変色は,修復後1週目より認められ,1年経過して変色が認められなかったのは23例(92.0%)であった.
    5.二次齲蝕は,修復後3ヵ月より認められ,1年経過して何ら異常のなかったものは23例(92.0%)であった.
    6.修復時歯髄反応を示したものは乳臼歯,幼若永久臼歯ともに1例づつ存在したが,歯髄処置を施すまで臆至らなかった.
    7.リコール時に再治療のため歯髄処置を必要としたものが乳臼歯,幼若永久臼歯ともに1例づつ認められた.以上の結果より,光重合型複合レジンGRAFT LC IIは,乳臼歯および幼若永久臼歯の2級窩洞の修復に有効であることが示唆された.
  • 牧 憲司, 葛立 宏, 鶴田 靖, 中島 龍市, 加来 昭典, 竹下 尚利, 高江洲 旭, 木村 光孝
    1993 年 31 巻 5 号 p. 879-886
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    九州歯科大学附属病院小児歯科外来を受診した6歳児から8歳児で臨床的立場から正常咬合を有し,下顎臼歯部に齲蝕や実質欠損のない男児24名,女児24名の計48名を対象に,パノラマエックス線写真による下顎底部皮質骨の厚さと歯槽骨骨塩量の測定を行い,次の結果を得た.
    1.下顎底部皮質骨の厚さの平均は男児において6歳3.26±0.24mm,7歳3,69±0.29mm,8歳3,84±0.31mm,女児において6歳3.41±0.36mm,7歳3.61±0.24mm,8歳3.79±0.21mmであった.歯槽骨骨塩量の平均値は男児において6歳3.33±0.21mmAl,7歳3.49±0.17mmAl,8歳3.86±0.33mmAl,女児において6歳3,43±0.32mmAl,7歳3.58±0.23mmAl,8歳3.87±0.19mmAlであった.
    2.下顎底部皮質骨の厚さと骨塩量の男女間のT検定の結果6歳から8歳まで有意差は認められなかった.年齢別のT検定の結果,下顎底部皮質骨の厚さは6・7歳,7・8歳間では有意差は認められず,6・8歳間では8歳が6歳に対し有意に大きな値を示した.骨塩量は6・7歳間では有意差は認められず,6・8歳間,7・8歳間では年齢の高い後者が前者に対し有意に大きな値を示した.
    3.被験児48名の下顎底部皮質骨の厚さと骨塩量の相関係数r=0.892であり,各年齢別の下顎底部皮質骨の厚さと骨塩量の相関係教は6歳r=0.914,7歳r=0.708,8歳r=0.953であった.
  • 貴田 章敬, 井上 三枝, 黒須 一夫
    1993 年 31 巻 5 号 p. 887-894
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯エナメル質厚径に関する研究は見られるが,乳歯の歯の大きさがエナメル質厚径に及ぼす影響についての報告は未だ見あたらない.
    そこで,愛知学院大学歯学部小児歯科学講座所蔵の日本人抜去上顎乳歯59歯を用い,歯の大きさ(歯冠唇(頬)舌径,歯冠近遠心径,Rectangle)と,唇(頬)・舌側面エナメル質厚径(歯冠最大豊隆部エナメル質厚径,エナメル質厚径最大値)の関係について調査した結果,両者の間には,相関係数0.767~0.981の高い正の相関関係が認められた.また歯の大きさから個々の歯のエナメル質厚径を推定する回帰方程式が求められた.さらに,乳歯と永久歯のエナメル質の相対的な厚さの違いについても検討を加えたところ,エナメル質の相対的な厚さは,乳歯に比べ永久歯の方が大きく,乳歯では,上顎に比べ,下顎の方が大きい傾向が認められた.
  • 加藤 一生, 森崎 市治郎
    1993 年 31 巻 5 号 p. 895-902
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ファンコニ症候群の病態モデルとして,Fischerラット(雄,8-9週齢)の腹腔内にマレイン酸を1回注射投与し,切歯に発現する形成障害について形態学的検討を行った.その結果,以下の所見が得られた.
    1.マレイン酸の投与量により,250,375 ,500μmol/100g体重の3群に分けた.250μmol投与群では,象牙質中に軽度の石灰化度の低下を示す石灰化不全層が存在していた.375μmol投与群では,象牙質中に石灰化の欠落した重度の石灰化不全層を認めるものが88%あった.この重症例では,エナメル質にも形成不全の領域がみられた.500μmol投与群では生存率は20%と低かった.
    2.375μmol/100g体重のマレイン酸を投与したラットの血清リン濃度は,投与後3日目まで有意に低値を示した.5日目以降は正常値に復していた.上血清カルシウム濃度は,投与後3日目のみ上昇していた.
    3.象牙質に認められた重度の石灰化不全層は,マレイン酸投与後3日目以降に形成された領域であり,9日目以降は正常な石灰化の再開していることが示された.
  • 青野 亘, 田村 康治, 南 貴洋, 武井 勉, 松本 道代, 大嶋 隆, 祖父江 鎭雄
    1993 年 31 巻 5 号 p. 903-910
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    三糖類のパノースを主要構成成分とする糖質甘味料,パノリッチ®およびパノリッチS®の齲蝕誘発能を,in vitroおよびin vivoの実験系において検討した.その結果,パノリッチおよびパノリッチSは,ミュータンス・レンサ球菌による酸産生の基質となるものの,ミュータンス・レンサ球菌のグルコシルトランスフェラーゼによるグルカン合成を抑制し,ミュータンス・レンサ球菌のスクロース依存性平滑面付着を阻害した.また,ミュータンス・レンサ球菌を感染させたSPFラットを用いた動物実験において,パノリッチおよびパノリッチSはきわめて弱い齲蝕誘発能しか示さなかった.
  • 山口 和史, 周 瑞瑛, 長谷川 信乃, 堀川 容子, 田村 康夫, 吉田 定宏
    1993 年 31 巻 5 号 p. 911-918
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において,小児の顎口腔系の疾患として,機能的な障害が問題となってきている.そこで各年齢群,性別による小児の正常な顎運動の範囲を把握している必要がある.
    今回,著者らは3歳から15歳までの男子1114名,女子1093名の計2207名を対象に,上下顎中切歯切端間距離における最大開口量について調査を行い,以下の結論を得た.
    1)最大開口量は,各学年の平均値において男子,女子それぞれ幼稚園年少組の38.4mm,37.4mmから中学校3年生の55.1mm,49.5mmへと,増齢的に増加していた.
    2)男子が女子より大きな値を示す傾向を認め,高学年になるに従い有意な性差を認めた.
    3)3歳から15歳の間で,最大開口量の増加量は男子が16.7mm,女子で12.1mmであった.
    4)最大開口量の最小値の平均値は幼稚園で32.7mm,小学校低学年で33.8mm,高学年で37.5mm,中学校で35.8mmであった.
  • 佐橋 喜志夫, 加藤 哲
    1993 年 31 巻 5 号 p. 919-926
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼児の咬合力と顎顔面形態との関連性を検討するため,Hellmanの歯牙年齢IIAで5歳児60名の咬合力の測定と正貌および側貌頭部X線規格写真のRicketts分析を行い,以下の結果を得た.
    1.咬合力の平均値は男児25.8±4.2kg,女児23.5±3.8kgで男女間に有意差を認めた.身長の平均値は110.3士4.1cm,体重の平均埴は18.9±2.0kgで男女間に有意差を認めなかった.また,咬合力と身長および体重との間に有意な相関関係を認めなかった
    2.短顔型,中顔型,長顔型の顔面形態で,咬合力の平均値に有意差を認めた.そして,この順に咬合力の平均値は低い数値を示していた.
    3.咬合力と下顎枝関節突起部の長さおよび下顎骨の屈曲との間に有意な正の相関関係を認めた.また,咬合力と下顎枝の高さとの間に有意な正の相関関係を認めた.
    4.咬合力と下顎乳前歯の突出量との間に有意な負の相関関係を認めた.また,咬合力と咬合平面の傾斜との間に有意な負の相関関係を認めた.さらに,咬合力と下顎後方臼歯の萌出余地との間に有意な正の相関関係を認めた.
    以上のことから,乳歯咬合完成期の幼児の咬合力と顎顔面形態,下顎骨の形態,頭蓋・顔面に対する下顎骨の位置および歯列との間に関連性を認めた.
  • 島村 和宏, 齋藤 高弘, 金子 實, 上岡 斉
    1993 年 31 巻 5 号 p. 927-935
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の脳頭蓋および顎・顔面頭蓋相互の関連を探るため,インド人小児頭蓋骨を用い頭部X線規格写真の計測値を基に長頭型,中頭型および短頭型の3型に分類し,距離計測および重回帰分析を行い以下の結果を得た.
    1.距離計測結果から,長頭型は短頭型と比較して脳頭蓋前方部および後方部が長く,逆に頭幅では短かった.顎・顔面頭蓋においては,高さおよび深さの前方部で長頭型がやや大きい傾向にあり,全体的には長頭型が僅かながら面長な形態を示していた.
    2.脳頭蓋形態について,脳頭蓋と顎・顔面頭蓋各部を計測し,また頭蓋指数を基準変数とした重回帰分析を行った結果,脳頭蓋後方部の長さ(CL3)が大きく関与していた.
    3.脳頭蓋後方部の長さCL3を基準変数として重回帰分析を行った結果,長頭型では6項目が選択され,重相関係数0.673,寄与率45.2%で,高さの関与が大きかった.
    4.中頭型では7項目が選択され重相関係数0.740,寄与率54.7%で,高さおよび幅の関与が大きかった.
    5.短頭型では4項目が選択され重相関係数0.570,寄与率32.5%で,幅の関与が大きかった.
  • 大林 由美子, 上里 奈名, 塩田 等, 谷崎 明弘, 三宅 実, 鶴田 敬司, 長畠 駿一郎
    1993 年 31 巻 5 号 p. 936-942
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,8歳8ヵ月および7歳5ヵ月の女児において下顎第2乳臼歯が埋伏した2症例を経験した.
    2症例ともX線所見によるとEは正常な歯軸のまま顎骨内に埋伏し,症例2では後継永久歯は埋伏乳臼歯の遠心に認められたが,既往歴,家族歴および全身所見に特記事項は認められず,Eの埋伏は局所的原因によるものと思われた.
    処置としては,2症例とも埋伏下顎第2乳臼歯の抜歯,5の開窓術を施行し,症例1では床拡大装置,sectional arch,cross elasticを使用,症例2ではブラケットを装着し,パワーチェーンによって咬合誘導を行った.
  • 甲原 玄秋, 佐藤 研一
    1993 年 31 巻 5 号 p. 943-948
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    顎骨に生じた嚢胞の開窓療法は,隣在歯を温存しつつ治癒に向かわせる方法として有用である.今回歯性嚢胞に開窓療法を施行し,著しく偏位していた原因歯を萌出し得た症例を経験した.症例は11歳女児で下顎前歯部の無痛性腫張を主訴に紹介され,X線検査により2より4に及ぶ含歯性嚢胞を認めた.
    3は歯冠と歯根の1/3が形成され,歯冠を遠心に向け,下顎下縁に沿って嚢胞の底部に存在した.嚢胞により〓の歯軸は圧排傾斜していた.口腔前庭に直径10mmの開窓を施行し,同部に栓塞子を装着した.栓塞子には嚢胞腔内に向け突起をつけ,それに小孔を開け減圧を計った.同時にCを抜去し保隙装置を装着した.開窓後5ヵ月で埋伏していた犬歯は90度歯軸を変え本来の犬歯の萌出部位に移動し,開窓後1年2ヵ月には犬歯の歯冠部は約2/3萌出し,1年8ヵ月後には犬歯は萌出を完了し治癒とした.しかしその後1年3ヵ月で嚢胞の再発をみた.再発した嚢胞はパルチュII法で摘出した.嚢胞壁は病理組織学的検査で重層扁平上皮であった.平成5年3月の時点では犬歯の歯軸の傾斜が見られるものの,嚢胞腔は骨に置換され,経過良好である.これらにより含歯性嚢胞の原因歯が90度回転し,かつ嚢胞の底部にあるといった著しい偏位をみる場合でも,開窓療法により萌出する可能性があることが判明した.また嚢胞の消失後の定期的な観察の必要性も確認された.
  • 石川 雅章, 木村 興雄, 高木 裕三
    1993 年 31 巻 5 号 p. 949-957
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    下顎前歯部の著しい動揺を主訴に来院した9歳の女児に全顎にわたる無根歯を認め,11年間に及ぶ経過観察を行った.歯冠の形態色調はほぼ正常であったが後方歯ほど小さく,X線写真では,永久前歯歯根は極端に短く丸味を帯びており,乳臼歯および第1大臼歯の歯根も短く単根円錐状であり,歯髄腔は上下に圧平されていた.嚢胞様X線透過像も齲蝕に罹患していない下顎前歯に観察され,初診時には,本症はShieldsらの分類する象牙質異形成症I型に相当すると思われた.
    その後順次萌出してきた歯の歯根も同様に著しく短かったが,20歳時でも前歯歯髄腔は閉塞せず,臼歯部の歯髄腔も初診時と大きな変化は見られなかった.抜去歯の病理組織所見では,エナメル質ならびに歯冠象牙質は概ね正常であるのに対し,歯根象牙質に至ると,直ちにあるいはほぼ正常な象牙質を多少形成した後,突然象牙細管の走行に急激な乱れを生じるようになり,歯根は細く丸く終息した.また,臼歯部歯髄腔に象牙質粒は散見されたが,閉塞を示す所見はみられなかった.一方,軟X線写真,免疫組織化学所見などから,歯根象牙質の異常所見が観察された部位までは,歯の形態形成および石灰化は順調であったと考えられた.
    最終観察時においても,明瞭な歯髄腔閉塞はどの歯にも観察されず,象牙質X線コントラストの減少も認められなかったことから,本症例は象牙質異形成症I型にはあたらず,新しい範疇の症例と考えられた.
  • 篠田 圭司, 蒲生 健司, 殿内 真知子, 松下 繁, 劉 栄伸, 田村 康夫
    1993 年 31 巻 5 号 p. 958-966
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    患児は顎関節症が疑われたため,某歯科医院から本学附属病院小児歯科に紹介された4歳6ヵ月の女児である.機能診査において開閉口運動時に両側の顎関節部より往復性のクリック音が認められた.クリック音は可聴性で,特に閉口時に大きい雑音を示していた.また閉口運動時に下顎はほぼ正中に閉口するものの咬合干渉が認められ,下顎は上顎に対し右側に偏位して咬頭嵌合した.
    治療として,まず患児は左手中指と人差し指を反転させ口腔内に挿入するという吸指癖が認められたため,吸指癖抑制の指導および顎の右側滑走を改善する目的での咬合調整を行った.さらに歯冠修復による咬合の再構成を行い咬合の安定を図った結果,顎関節音の消退が認められた.
    以上のことから本症例における顎関節症の発症には吸指癖による顎の偏位,早期接触後の顎の側方滑走が原因し,顎関節部に機能的変化が生じ,顎関節症発症に至ったことが考えられた.
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