抄録
乳歯エナメル質厚径に関する研究は見られるが,乳歯の歯の大きさがエナメル質厚径に及ぼす影響についての報告は未だ見あたらない.
そこで,愛知学院大学歯学部小児歯科学講座所蔵の日本人抜去上顎乳歯59歯を用い,歯の大きさ(歯冠唇(頬)舌径,歯冠近遠心径,Rectangle)と,唇(頬)・舌側面エナメル質厚径(歯冠最大豊隆部エナメル質厚径,エナメル質厚径最大値)の関係について調査した結果,両者の間には,相関係数0.767~0.981の高い正の相関関係が認められた.また歯の大きさから個々の歯のエナメル質厚径を推定する回帰方程式が求められた.さらに,乳歯と永久歯のエナメル質の相対的な厚さの違いについても検討を加えたところ,エナメル質の相対的な厚さは,乳歯に比べ永久歯の方が大きく,乳歯では,上顎に比べ,下顎の方が大きい傾向が認められた.