小児歯科学雑誌
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ファンコニ症候群のラット実験モデルにおける歯牙硬組織所見
加藤 一生森崎 市治郎
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1993 年 31 巻 5 号 p. 895-902

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抄録

ファンコニ症候群の病態モデルとして,Fischerラット(雄,8-9週齢)の腹腔内にマレイン酸を1回注射投与し,切歯に発現する形成障害について形態学的検討を行った.その結果,以下の所見が得られた.
1.マレイン酸の投与量により,250,375 ,500μmol/100g体重の3群に分けた.250μmol投与群では,象牙質中に軽度の石灰化度の低下を示す石灰化不全層が存在していた.375μmol投与群では,象牙質中に石灰化の欠落した重度の石灰化不全層を認めるものが88%あった.この重症例では,エナメル質にも形成不全の領域がみられた.500μmol投与群では生存率は20%と低かった.
2.375μmol/100g体重のマレイン酸を投与したラットの血清リン濃度は,投与後3日目まで有意に低値を示した.5日目以降は正常値に復していた.上血清カルシウム濃度は,投与後3日目のみ上昇していた.
3.象牙質に認められた重度の石灰化不全層は,マレイン酸投与後3日目以降に形成された領域であり,9日目以降は正常な石灰化の再開していることが示された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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