小児歯科学雑誌
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乳歯列癒合歯とくに両側性癒合歯について
国松 仁志三好 作一郎佐藤 敦子清水 保
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1994 年 32 巻 1 号 p. 14-20

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抄録
日本人は乳歯列の癒合歯が西洋人よりも多いと言われているが有意差検定されたものではない.また癒合歯頻度の少ない西洋では癒合歯は常染色体性優性遺伝するとされている.さらに日本では癒合歯が増加の傾向があるとの報告もある.これらを調査するために,佐世保市の3-6歳児4422名(男子2245:女子2177名)の歯列を観察し,癒合歯のある者124名(男子:66名;女子58名),うち両側性に癒合歯のある者14名(男子:6名;女子8名)を得た.
これらをDuncan & Helpin ら西洋白人の頻度(0.5%)とX2-検定すると極めて高い有意差が認められた.日本人は西洋人よりも乳歯列癒合歯の頻度が多いといえる.また両側性癒合歯の頻度は日本人は西洋人の16倍もの高い値であった.西洋で一般化されている常染色体性優性遺伝説は確認することが出来なかった.逆に常染色体性劣性遺伝であるような例が多かった.最近20年間に癒合歯が増加傾向にあるとの説も裏付けることが出来なかった.先天的欠如歯を最近は癒合歯の完全形と見なして頻度が増えている場合や,癒合歯を見落としている場合がある.さらに重要なことはわずかな標本集団から母集団平均(日本人の頻度)を推定するにはもっと慎重でなければならないと考える.異常歯列があった場合には家族を調査し,確実な家系図を作るよう提案するものである.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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