小児歯科学雑誌
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リン酸四カルシウム,リン酸四カルシウムークエン酸複合セメントが歯髄細胞に及ぼす影響
新谷 誠康木下 昭弘木下 弥生大西 智之楽木 正実祖父江 鎭雄宇根 成実
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1994 年 32 巻 1 号 p. 83-88

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抄録

イヌ歯髄に直接覆髄すると修復象牙質の形成を促す作用のあるリン酸四カルシウム-クエン酸セメント(4CPC) ,その主たる構成成分であるリン酸四カルシウム(4CP)およびハイドロキシアパタイト(HAP)をイヌ歯髄細胞と共に3日,7日,10日間培養し,そのアルカリホスファターゼ(ALPase)活性,DNA合成およびタンパク合成におよぼす影響について検討した.それらの結果,3群ともにALPase活性およびタンパク合成は細胞のみを培養した対照群より有意に高い値を示し,DNA合成は有意に低い値を示した.特に,10日間培養した場合,4CP群のALPase活性は対照群の9.4倍に,4CPC群は4.6倍に,HAP群は4.5倍に達した.
以上の結果から,4CP,4CPCおよびHAPには象牙芽細胞の分化を促す作用があり,その作用は4CPにおいて最も強いものと思われた.また,4CPCを直接覆髄した場合に認められる修復象牙質の形成は,おもに4CPの作用であると推察された.さらに,本実験系は,イヌ歯髄に4CPCを直接覆髄したin vivoの実験結果を反映しており,薬剤が歯髄に与える影響をスクリーニングするための非常に有用な実験系であることが明らかになった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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