抄録
有病者,特に呼吸機能に障害のある患者の歯科治療には,呼吸状態を監視するための適切なモニターを使用することが望ましい.本研究では,有病者の意識下歯科治療時の呼吸モニターとしてカプノメーターの使用を試み,呼気終末炭酸ガス濃度(ETCO2),呼吸数,同時に動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定し,以下の結果を得た.
1.健康成人を対象とした測定では,SpO2とETCO2はともに分時呼吸量と相関しており,呼吸量減少時にSpO2は低下し,逆にETCO2は上昇した.
2.健常児において,歯科治療中のETCO2の変動係数は安静時に比べ大きくなったが,上昇傾向は認められず,SpO2は治療中も安定していた.
3.脳性麻痺患者では,浸潤麻酔時および歯科治療中にSpO2の低下傾向を認め,呼吸機能の予備力が低下していることが示唆されたが,ETCO2に明らかな上昇傾向は認められなかった.
4.Rett症侯群の小児および脳性麻痺患者の歯科治療中に惹起した無呼吸の際に,カプノメーターの呼吸曲線に早く変化が現れ,続いてETCO2,SpO2に変化が認められた.
5.有病者,特に呼吸機能の障害が疑われる患者の意識下での歯科治療の際には,カプノメーターによる呼吸のモニタリングは重要であり,パルスオキシメーターとの併用が望ましいと考えられた.