1995 年 33 巻 3 号 p. 470-476
九州大学歯学部附属病院小児歯科外来において,1988年1月より1992年12月までの5年間に水酸化カルシウム製剤(カルビタール®)による生活断髄を行った乳歯のうち,定期診査時のデンタルエックス線写真が1枚以上存在し,読影可能であった252歯(男児83名,女児60名,計143名)に対し,臨床的かつエックス線学的にその経過を観察し,検討を加えた.
結果は次に示すとおりであった.
1.最終観察時における経過良好例は252歯中184歯(全体の73.0%)で,経過不良例は68歯(全体の27.0%)であった.
2.前歯部で不良例の割合が低く,臼歯部で高い傾向がみられた. 特に,下顎第2乳臼歯において不良例の割合が高かった.
3.全体の経過不良例のうち19.1%が施術後6か月以内に,58.8%が施術後12か月以内に認められ,24か月以上経過した後も不良例の出現が認められた.
4.施術時年齢では5歳以降での不良例の割合がそれ以前に比べ高かった.
以上のことより,処置後も交換期までは,エックス線診査を含めた定期的な経過の観察が必要であることがあらためて確認された.