小児歯科学雑誌
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小児の粘液襄胞55例についての臨床病理学的観察
熊谷 和美富沢 美恵子野田 忠鈴木 誠
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1995 年 33 巻 3 号 p. 633-642

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抄録

1979年9月から1994年6月までの14年10か月間に,新潟大学歯学部附属病院小児歯科外来を受診し,粘液嚢胞と診断された55例について臨床病理学的観察を行った.
患児の性別は,男児23例,女児32例で,年齢は1歳2か月から14歳10か月に分布し,5歳から9歳までが多かった.
口腔粘膜の腫脹を主訴に受診したのは28例で,これ以外は齲蝕治療(20例),咬合異常(3例),その他歯の外傷など(4例)を主訴に受診し,発見された.
発生部位は下唇37例,香9例,口腔底7例,上唇と頬粘膜に1例ずつみられた.
臨床所見では,肉眼的には腫瘤または膨隆としてみられ,大きさは下唇および舌では直径5mm以下の病変が多いのに対し,口腔底では直径6mm以上のものが多かった.
下唇では乳前歯の脱落と永久歯の萌出に伴い,発生部位が正中から犬歯部へと変化しているのがみられた.
30例に摘出術を,4例に開窓術を行った. このうち4例に再発がみられたが,その後縮小傾向を示したため再手術を行わなかった. 残りの21例は経過観察を行い,このうち17例が自潰後,消失した.
病理組織学的には,全例が溢出型であった. 10例はいわゆる粘液肉芽腫型を示し,7例は明瞭な壁を有するもの,3例はいわゆる粘液肉芽腫が器質化したものであった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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