抄録
エッチング効果を有しながらも,親水性のエタノールや水を全く含まずそれ自体がシーラントとなりうる疎水性のセルフエッチングシーラントの開発を目的として基礎的検討を行った。その第一段階として試作リン酸モノマー組成物のエッチング効果を検討するために,歯の主成分であるハイドロキシアパタイトの溶解に関する実験を行った。その結果以下のような結果が得られ,シーラント材一液によってすべての処置が行える〈 オール・イン・ワン・システム〉の可能性が示唆された。
1.試作リン酸モノマー組成物(試作シーラント材)は乾燥状態において,ハイドロキシアパタイトを溶解し得た。
2.反応初期において,その溶解量はハイドロキシアパタイトの湿潤状態に大きく影響され,リン酸モノマー:希釈モノマー=5:5の系では湿潤させたものの方が乾燥状態のものと比べ,反応開始1時間で約9倍,2:8の系では同じく約18倍の溶解を示した。
3.ハイドロキシアパタイトの溶解量はリン酸モノマーの量に依存していた。