抄録
笑気吸入鎮静法下の歯科治療時にマスク装着やガス吸入に抵抗し,歯科治療が極めて困難であった6歳から21歳の障害児21名を対象にミダゾラム0.2mg/kgを舌下投与し,笑気吸入鎮静法との併用下で歯科治療を実施し,その臨床的有用性について検討し,以下の結果を得た.
ミダゾラム舌下投与時に拒否的行動を示したものは,21名中4名(19.0%)で,投与5-10分後には鎮静効果が発現し始め,15-20分には全症例安定した鎮静度に達していた.歯科処置別有効率は,局所麻酔が65.0%と最も低く,開口・口腔診査が90.5%と最も高くなっていた.平均回復時間は116.3分で,投与直後から翌朝までの間に,臨床上問題となる不快事項の発現は,認められなかった.以上の総合評価である臨床的有用性は,76.2%に認められた.
21例中16例(76.2%)は,21秒以上舌下部にミダゾラムの貯留が可能で,20秒以下の貯留時間では5症例中2例(40.0%)に臨床的有用性が認められたのみであるのに対し,21秒以上の貯留時間では16例中14例(87.5%)に臨床的有用性が認められ,薬剤貯留時間と臨床効果の関連性が示唆された.