抄録
小児歯科臨床において,小窩裂溝填塞法は小窩裂溝齲蝕の予防に欠かせない方法であり,その材料学的性質においても抗齲蝕性を持つことが望まれる.そこで,フッ化物配合および非配合の光重合型レジン系小窩裂溝填塞材3種と,光重合型グラスアイオノマーセメント1種について齲蝕原因菌であるS.mutans,S.sanguis,L.caseiに対する抗菌作用及びフッ素イオン溶出濃度,pHとの関連性を検討し,以下の結果を得た.
1)フッ化物配合の有無を問わず光重合型レジン系小窩裂溝填塞材は,好気条件下でS.mutansに対して静菌的に作用していた.光重合型グラスアイオノマーセメントで,全供試菌に対して抗菌作用が認められた.
2)光重合型グラスアイオノマーセメントで,全供試菌に対して抗菌作用が認められた.
3)光重合型グラスアイオノマーセメントが最も高いフッ素イオン溶出濃度を示した.
4)光重合型グラスアイオノマーセメントが最も高いpHを示した.
以上のことから,今回使用したすべての試料は好気条件下のS.mutansに対して抗菌作用を示した.この材料的性質は臨床的に小窩裂溝填塞処置に,有利に作用すると考えられる.