抄録
近年,不正咬合,顎関節症などの低年齢化が話題となっており,成長発育途上にある小児期の咀嚼機能を明らかにすることは,将来,正常な咬合機能を営む上で重要なことと考えられる。そこで,簡便に咬合接触面積,咬合力,咬合バランスなどの咬合評価が可能なデンタルプレスケール®およびオクルーザー®FPD-703からなるシステムを小児に応用するに当たり,デンタルプレスケール®の最適な保管環境および測定時期を確認する目的で検討を行い,以下の結果を得た。
1.保存条件は冷蔵庫内保管,次に常温遮光性包装材内保管が良いと思われ,常温での保管は計測値に大きな影響を与えないことが示唆された。
2.冷蔵庫内保管ではアーチファクトの低い状態を長期間維持していた。
3.蛍光灯下保管および直射日光下保管では発色面積,圧力値とも,経時的に減少傾向にあり,採得後直ちに遮光する必要があると考えられた。また,50Rは30Rより光の影響を受けやすいことがわかった。
4.測定時期は冷蔵庫内保管する場合,採得後30Rでは3時間以降1週間以内,50Rでは3時間以降3日以内(最適測定時期)に行うのが良いが,より計測値を安定させるため,時間を決めて測定することが望ましいと考えられた。
5.理論値と最適測定時期(冷蔵庫内保管)における計測値の平均を比較すると,計測値のほうが大きくなる傾向にあった。計測値を荷重別で比較してみると,30R,50Rとも荷重が大きくなるに伴い発色面積の増加率は大きくなり,最大圧力値の増加率は逆に小さくなる傾向にあった。