小児歯科学雑誌
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35 巻, 4 号
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  • 鈴木 祥子, 柘植 昌代, 重山 文子, 岸本 寿子, 原 直仁, 音山 考子, 人見 さよ子, 新門 正広, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    1997 年 35 巻 4 号 p. 563-572
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯と永久歯の先天性欠如が,どのように関連しているかということを知るのは,臨床において非常に重要なことである.そこで,大阪歯科大学小児歯科外来を訪れた小児患者25,130人を対象に乳歯または永久歯に先天性欠如を有する340人の問診,経年的オルソパントモグラム及びデンタル型エックス線写真を研究資料として乳歯および永久歯の先天性欠如をそれぞれ比較検討し,以下の結果を得た.
    1.乳歯に欠如のある者の発現率は0.12%,永久歯に欠如がある者は1.35%であった.
    2.乳歯および永久歯ともに欠如の発現率には,男女別,左右側別,上下顎別,前歯臼歯部別に差を認めなかった.
    3.欠如歯数別の発現率では,乳歯および永久歯ともに1歯欠如が最も多く,次に2歯欠如が多く認められたが,永久歯では5歯以上の欠如はかなり少なかった.
    4.一人当りの欠如歯数は,永久歯では男女差は認められなかったが,乳歯においては女児より男児の方が多数歯の欠如が多いことが認められた.
    5.乳歯が欠如し,その後継永久歯が欠如する発現率は79.0%であり非常に高く,特に上顎側切歯の症例に多く認められた.また,乳歯欠如が認められたのにもかかわらず,その後継永久歯に欠如の認められなかった症例も21.0%認められた.
  • 細矢 由美子, 堀内 礼子, 柏原 陽子, 西口 美由季, 後藤 讓治
    1997 年 35 巻 4 号 p. 573-582
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    セルフエッチングシステムを用いた場合のウシ乳歯エナメル質と象牙質に対するレジンの接着性について観察するとともに,歯面処理材を併用した他の接着システムを用いた既報の結果と比較し,本システムの乳歯に対する有効性を検討した.
    試料には,抜歯後生理食塩水中に冷凍保存したウシ下顎乳切歯を用いた.接着システムとコンポジットレジンは,クラレ社製のClearfil Liner Bond II®システムとClearfil Photo Anterior®を用いた(LB II群).
    1)LBプライマーのエナメル質に対する歯面処理効果は低く,象牙質に対する歯面処理効果は中等度であった.
    2)LB II群の接着強さを非サーマルサイクリング群とサーマルサイクリング群間で比較すると,象牙質について両群間に有意差が認められ,サーマルサイクリング群が低かった.
    3)LB II群の接着強さをエナメル質と象牙質問で比較するとサーマルサイクリング群において有意差が認められ,象牙質が低かった.
    4)Clearfil Liner Bond II®システムを用いた場合の接着強さは,乳歯エナメル質及び乳歯象牙質ともに歯面処理材を併用した他の接着システムを用いた既報におけるほとんどの結果より有意に低く,接着性に劣っていた.接着性の低下は特に象牙質のサーマルサイクリング群で著明であった.
  • 渋井 尚武, 鈴木 克政
    1997 年 35 巻 4 号 p. 583-590
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    現在市販されている8種類の研磨ペーストについて,いずれの研磨ペーストが能率良く研磨でき,しかも歯面を滑らかにすることができるかを知るために,実験的にヒトのエナメル質とほぼ同等の硬さのステンレス板と,セメント質の硬度に近似のアルミニウム板を被検試料として,歯ブラシ磨耗試験機にゴム歯ブラシを取り付けて1000gf/cm2の荷重下で磨耗試験を行った。また,試料の重量測定とともに研磨面の中心線平均粗さと実体顕微鏡による観察を行い,下記の結果を得た。
    1)エナメル質に相当するステンレス板に対して研磨性があり,かつその表面を滑らかに仕上げることが出来たのはPP3であった。
    2)セメント質に相当するアルミ板に対してはPP1で研磨した場合のみ未処理の表面より滑らかになっていた。
    3)RDA170とRDA250はステンレス板,アルミ板を大きく削り取る恐れがあり,使用に際しては注意を要する。
    4)CORの研磨面はアルミ板,ステンレス板に大きなキズが付き,しかも研磨性が他のペーストに比べ極端に大きかった。
  • 大山 洋, 熊坂 純雄, 小松 太一, 木本 茂成, 内一 實, 内村 登
    1997 年 35 巻 4 号 p. 591-598
    発行日: 1997年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,不正咬合,顎関節症などの低年齢化が話題となっており,成長発育途上にある小児期の咀嚼機能を明らかにすることは,将来,正常な咬合機能を営む上で重要なことと考えられる。そこで,簡便に咬合接触面積,咬合力,咬合バランスなどの咬合評価が可能なデンタルプレスケール®およびオクルーザー®FPD-703からなるシステムを小児に応用するに当たり,デンタルプレスケール®の最適な保管環境および測定時期を確認する目的で検討を行い,以下の結果を得た。
    1.保存条件は冷蔵庫内保管,次に常温遮光性包装材内保管が良いと思われ,常温での保管は計測値に大きな影響を与えないことが示唆された。
    2.冷蔵庫内保管ではアーチファクトの低い状態を長期間維持していた。
    3.蛍光灯下保管および直射日光下保管では発色面積,圧力値とも,経時的に減少傾向にあり,採得後直ちに遮光する必要があると考えられた。また,50Rは30Rより光の影響を受けやすいことがわかった。
    4.測定時期は冷蔵庫内保管する場合,採得後30Rでは3時間以降1週間以内,50Rでは3時間以降3日以内(最適測定時期)に行うのが良いが,より計測値を安定させるため,時間を決めて測定することが望ましいと考えられた。
    5.理論値と最適測定時期(冷蔵庫内保管)における計測値の平均を比較すると,計測値のほうが大きくなる傾向にあった。計測値を荷重別で比較してみると,30R,50Rとも荷重が大きくなるに伴い発色面積の増加率は大きくなり,最大圧力値の増加率は逆に小さくなる傾向にあった。
  • 田村 文誉, 水上 美樹, 千木良 あき子, 向井 美恵
    1997 年 35 巻 4 号 p. 599-604
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    摂食機能においては口唇が重要な役割を担っているにもかかわらず,発達的視点から口唇の機能を客観的にとらえた研究は散見されるのみである。そこで口唇機能の発達する離乳期から乳歯列の完成する3歳までの時期に注目し,同一対象児の経時的な発達変化を知り,口唇機能の発達過程を明らかにする目的で,捕食時口唇圧を経時的に測定した。その結果,以下のような知見を得た。
    1)生後月数と口唇圧との関連では,横断的研究による健康乳幼児群の結果と同様に,36か月までに口唇圧が増加する傾向が認められた。
    2)離乳開始期から口唇圧がある程度大きい場合には増齢による圧の増加があまりみられず,36か月に近づいてから口唇圧が増加した。
    3)口唇捕食不可率は,A児,B児ともに30か月頃に急激な減少を示した。
  • 蓜島 弘之, 蓜島 桂子, 野田 忠
    1997 年 35 巻 4 号 p. 605-612
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    エックス線被爆が非常に少ないエックス線テレビ撮影装置で,9か月乳児の吸啜運動を観察した。喉頭蓋と軟口蓋は接していなかったが,吸啜中鼻咽腔は開放された状態を保っていた。吸啜運動時,舌は明確な波状運動を呈し,その中央部が大きく陥凹していた。舌中央部の最大振幅は5.6mmと大きかった。これに対し,下顎の上下的変位量は非常に小さく,舌骨が前上方位に固定されていたことから,舌骨上筋群の下顎を開口させる働きは作用しにくくなっており,この結果,下顎位は安定していると考えられた。乳首の圧迫状態については,閉口時にも乳首の頸部付近が乳前歯部により圧迫されるが,乳首全体としては舌中央部の陥凹している間,舌前方部により持続的に圧迫されることが確認された。舌前方部の乳首の持続的圧迫は,乳汁を圧搾する作用のほかに,舌前方部を固定することによって舌中央部の陥凹形成を容易にするための働きがあると考えられた。また,前方部を舌と口唇で乳首をパッキングし,後方部を舌根部と軟口蓋で閉鎖して,口腔を一つの閉鎖腔としていることが確認された。吸啜圧の大きな変動は,大きく素早い舌の波状運動が乳児の小さな閉鎖された口腔内で生じることによると考えられた。下顎と,舌骨が安定し,舌前方部の乳首への圧迫が同時に起こることによって,舌中央部の陥凹形成が生じやすくなっている可能性が示唆された。
  • 田邊 義浩, 石倉 優香, 野田 忠
    1997 年 35 巻 4 号 p. 613-624
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    自閉症児者の歯科治療に対する適応状態を検討する目的で,16歳から27歳の自閉症児者17名を対象とし,規格化した内容で歯石除去を行い,その様子をビデオに記録し分析した。処置は約6か月の間隔で2回行い,被験者の適応状態と,その変化について検討し,以下の結論を得た。
    1)太田のStage評価は,施設で調査した結果と歯科診療室での結果を比較したところ,一致率は88.2%であった。結果が異なった場合も,評価が1段階低い場合が多く,かけ離れた評価となることはなかった。
    2)超音波スケーラーを用いた歯石除去に対する適応状態は,被験者にとって不慣れな環境であるにもかかわらず17名中10名(58.8%)が最後まで処置を受けることができた。5名(29.4%)は処置の途中で診療室から出ていったために中止,全く処置を受けることができなかったのは2名(11.8%)であった。
    3)同じ内容の処置を約6か月後に同一条件で行った結果,適応状態が悪くなった被験者は無く,1回目で中断や中止を認めた12名のうち8名(66.7%)に,適応状態の改善を認めた。
    4)林式数量化II類を用いて適応状態に関係する要因を分析した結果,被験者の年齢,太田のStage評価,調査時に服用していた薬剤が歯科治療に対する適応に大きく関与していた。これに対して,患者のIQと歯科治療経験は比較的影響が小さかった。
  • 内藤 真理子, 川原 玲子, 井手口 博, 上田 和茂, 鶴田 靖, 吉永 久秋, 内藤 徹, 木村 光孝
    1997 年 35 巻 4 号 p. 625-630
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    児童の食習慣を検討する目的で,北九州市内の公立小学校に通学する3年生から6年生までの児童,男児1,336名,女児1,248名,計2,584名を対象に,質問票による調査を実施した。
    「朝ごはんを食べない」と回答した児童は5%前後であり,平成4年度の調査結果と比較して著しい変化はなかった。「やわらかいものを食べる」あるいは「かたいものをあまり食べない」と回答した率は50%前後であり,全般に女児に高く認められる傾向にあった。「食べる速さがはやい」と回答した率は20%前後であり,男児の率が有意に高く認められた。「食べるときにあまりかまない」と回答した率は10%前後であり,男児に対して有意に高く認められた。「インスタント食品をよく食べる」と回答した率は15%前後であり,全般に男児に高く認められる傾向にあった。学年の上昇にともない,主食の中でごはんを「一番好き」と回答した率が上昇する傾向にあった。それぞれの設問における男女児間の回答の違いは,全般に6年生でその差が減少する傾向にあった。
    児童を取り巻く環境や状況の変化が食習慣に影響を及ぼすことが示唆されたことから,早期からの段階を追った「食育」の過程において,この時期に好ましい食習慣の確立をはかることが重要であると思われた。
  • 第4報心理的ストレス得点と対処行動との関連性について
    簡 妙蓉, 石川 隆義, 長坂 信夫
    1997 年 35 巻 4 号 p. 631-637
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科では,小児患者,術者,母親の三者の人間関係で主に歯科治療が行われる。小児の治療には母親が付き添って来ることが多く,母親の協力が得られないと行うことができない。しかし,歯科診療室に母親が入室した際,術者は何らかの心理的ストレスを受けると考えられる。一般的に,ストレッサーに対して影響を強く受ける人もいれば,ほとんど影響を受けない人もいる。反応の仕方や程度には個人差があり,人々の解釈や反応が違うように,ストレスに対する感受性もそれぞれ異なっている。そこで,小児歯科診療時における術者の心理的ストレスとその対処行動(コーピング)に焦点を当て,どのような関連性をもっているかについて検討を行い,以下の結果を得た。
    1.心理的ストレス得点は,対処行動の全体量と頻度で関連性が認められたが,強度とは関連性が認められなかった。
    2.問題中心型では,対処行動の頻度において,高ストレス群と低ストレス群との間で有意差が認められた。情動中心型では,対処行動の全体量や頻度において,両群間に有意差が認められた。
    3.対処行動の6タイプからの検討では,全体量において,気持ちを何かで紛らわす型で高ストレス群と低ストレス群との間で有意差が認められた。頻度については,気持ちを何かで紛らわす型,じっとしている型の2タイプにおいて両群間に有意差が認められた。強度では,全てのタイプにおいて有意差が認められなかった。
    以上のことより,母親から受ける術者の心理的ストレス得点とそのストレスに対する対処行動には関連性があり,心理的ストレスが増せば対処行動の機会も増すことが示された。
  • 山口 理衣, 伊東 理夫, 小笠原 榮希, 進士 久明, 上西 秀則, 本川 渉
    1997 年 35 巻 4 号 p. 638-642
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床における強電解酸性水のより有効利用を調べるため,実験的感染腐敗根管を用いて,強電解酸性水による洗浄,消毒効果を調べた。また,歯ブラシの消毒効果についても検討し,以下の成績を得た。
    1.根管消毒効果は強酸性水の使用量に比例して効果が高まる。
    2.根管拡大後,残留するスメア層は除去した方がより効果的である。
    3.強酸性水は歯垢細菌中の特にグラム陰性菌に対しては強い殺菌効果を示す。
    4.使用後の歯ブラシを流水にて軽く洗った後に強酸性水に短時間(1分間)浸漬することで有効な消毒効果が得られた。
    以上のことにより,金属以外の歯科用小器具の簡便な消毒にも応用可能と考えられた。
  • 兼子 周代, 望月 清志, 大多和 由美, 藥師寺 仁, 町田 幸雄
    1997 年 35 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    平成元年4月から平成7年6月までの6年2か月間に永久歯の萌出遅延を主訴に東京歯科大学水道橋病院に来院した小児を対象に,萌出遅延歯の歯種別発現頻度,発現歯数別患児数および原因について調査を行った。
    1.永久歯の萌出遅延を主訴に来院した小児の新患総数に対する割合は7.2%であり,性差は認められなかった。
    2.萌出遅延歯の総数は93歯であった。歯種別発現頻度は,上顎では中切歯が最も多く,次いで犬歯,側切歯,小臼歯,第一大臼歯の順であった。下顎では第一大臼歯が最も多く,次いで犬歯,側切歯の順であった。
    3.萌出遅延の原因は,上顎では歯胚の位置異常が最も多く,次いで強靭な歯齦の被覆によると思われるもの,過剰歯の存在,先行乳歯の晩期残存,先行乳歯の外傷,萌出余地不足,歯根形成程度の違い,濾胞性歯牙嚢砲,歯牙腫の存在であった。下顎では歯胚の位置異常および濾胞性歯牙嚢胞によるもののみで,他の原因は認められなかった。
  • 伊藤 香織, 荻原 和彦, 相山 誉夫, 菊池 進
    1997 年 35 巻 4 号 p. 649-661
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯胚に対する放射線照射がその後の歯の発生と発育に与える影響,特に照射線量と照射時期の違いによる影響を調べる目的で本研究を行った。妊娠マウスの腹部に6MVの放射線照射を行い,得られた胎仔の歯胚について組織学的観察とコンピュータ・グラフィックスによる三次元的解析を試み,以下の結果を得た。
    1)胎齢9日および10日に3,4,5Gy,11日に5Gy照射した群では生存胎仔は得られなかった。
    2)同じ胎齢で照射を受けた場合,胎仔の体重は照射線量の増加にともない減少した。
    3)発生早期(胎齢9~13日)に照射を受けた歯胚は,コンピュータ・グラフィックスにより発育の遅れと倭小化が示された。
    4)発生早期歯胚への照射はエナメル器体積と象牙質表面積の増加を阻害し,その後の形成量は照射線量にともない減少した。
    5)エナメル器体積は,4,5Gy照射群では照射時胎齢が遅いほど減少傾向が少なかった。
    6)エナメル器体積あるいは象牙質表面積と胎仔の体重の比率を算出したところ,エナメル器体積よりも象牙質表面積の減少傾向の方が大であった。
    7)胎齢12日に5Gy照射した歯胚は,照射直後は組織学的な変化を示さなかったが,胎齢14日ではほぼ一日分の発育の遅れを示した。
  • 竹本 弘子, 簡 妙蓉, 石川 隆義, 長坂 信夫
    1997 年 35 巻 4 号 p. 662-669
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    思春期の若者が歯科診療を受ける際に,歯科医師および歯科医療スタッフにどの程度信頼度を感じているかを調査することを目的として,思春期の若者504人のうち記載不十分なものを除いた490人を対象に,質問紙調査を実施した。アンケートはDental Belief Surveyを改良し,作成した6領域25項目の設問からなる「歯科診療に対する信頼度調査表」と,歯科診療一般についてを問う設問からなっている。結果は以下の通りである。
    1.思春期における「歯科診療に対する信頼度調査表」を信頼性と妥当性の観点から検討した結果,歯科に対する信頼度を測定する尺度として有効であることが示された。
    2.不信度が高い設問項目は,「待合室におけるスタッフの対応」「治療方法や料金の同意に関するインフォームド・コンセント」,不信度が高い領域は「環境・スタッフの対応」「インフォームド・コンセント」であった。
    3.性別,歯科治療経験,口腔状態の自己評価,歯科不安,歯科恐怖について信頼度を検討した結果,男性,口腔状態不良群,高不安群,高恐怖群の方が女子,口腔状態良好群,低不安群,低恐怖群よりも有意に不信度が高いことが認められ,歯科治療経験の有無においては,有意差が認められなかった。
  • 辻野 啓一郎, 町田 幸雄
    1997 年 35 巻 4 号 p. 670-683
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼児期から青年期まで矯正処置などをすることなく正常咬合となった小児28名(男児13名女児15名)について,2か月間隔に得られた上下顎累年石膏模型を用いて,暦齢では3歳から20歳まで,歯牙年齢では各永久歯出齦時を基準とし出齦後7年から14年まで,乳犬歯,第一乳臼歯,第二乳臼歯,犬歯,第一小臼歯,第二小臼歯,第一大臼歯,第二大臼歯の各歯列弓幅径について観察した。乳犬歯間幅径,第一乳臼歯間幅径,第二乳臼歯間幅径は6歳頃まで増加量がわずかであったが,この時期乳犬歯間幅径はほぼ安定し,上顎第二乳臼歯間幅径は増加量が最も大きかった。その後は,各部位ともに漸次増加を示し,切歯萌出期では乳犬歯間幅径の増加が特に大きかった。
    犬歯間幅径は出齦時から上顎では13歳頃,下顎では15歳頃まで,減少を示しその後安定した。歯牙年齢での観察で出齦後1年まで萌出に伴う減少が著明であった。上顎第一小臼歯間幅径は歯牙年齢では出齦後6か月まで減少が見られたが,その後は著明な変化はみられなかった。下顎第一小臼歯間幅径,第二小臼歯間幅径では出齦後数年間増加がみられたがその後は著明な変化はみられなかった。第一大臼歯間幅径は上顎では15歳頃まで漸次増加し,下顎では出齦後数年間わずかに増加後ほぼ安定していた。第二大臼歯間幅径は上顎では出齦後2年まで減少を示し,下顎では萌出初期は不安定であり,その後はほぼ安定していた。暦齢と歯牙年齢による観察の結果の差違は,上下顎犬歯間幅径で特に著明であった。
  • 菅原 美佳
    1997 年 35 巻 4 号 p. 684-698
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は鼻閉が食物咀嚼におよぼす影響を明らかにすることを目的に行った。成人5名(筋電図学的実験では6名)を対象とし,試料にはピーナッツ,ビスケット,カリントウ,ニンジンを用いた。鼻閉にはノーズクリップを用い,鼻腔を確実に閉鎖した。食物咀嚼実験では各被験者の一口量を元に咀嚼時間,咀嚼時唾液分泌量,嚥下時食塊水分量を求め,筋電図学的実験では咀嚼周期,筋放電持続時間,筋放電間隔を求め,同一被験者を対象に正常時と鼻閉時について比較検討し,次の結果を得た。(1)鼻閉時の一口量咀嚼時間は有意に延長した。(2)鼻閉時の嚥下時食塊水分量と咀嚼時唾液分泌量は,正常時との間に有意差が認められなかった。(3)鼻閉時では正常時に比べて咀嚼周期が有意に延長した。(4)鼻閉時の筋放電持続時間は延長する例,短縮する例,変わらない例が認められたが,いずれの場合でも正常時との間に有意差は認められなかった。(5)鼻閉時の筋放電間隔は正常時に比べて有意な延長を認めた。(6)鼻閉時の咀嚼周期の延長は,主に筋放電間隔の延長によることが示唆された。(7)鼻閉時の筋放電間隔の変動係数は高い値を示し,正常時と比較して咀嚼リズムが不規則であった。
    以上のことより,鼻閉時の咀嚼時間の延長は筋放電間隔の延長によると推察された。また,鼻閉時の唾液分泌量の低下は,咀嚼周期の乱れも要因の一つであることが推察された。
  • エナメル質形成障害部の結晶性の検討
    谷川 良謙, 尾辻 渉, 玉井 良尚, 棚瀬 精三
    1997 年 35 巻 4 号 p. 699-705
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯の外傷による後継永久歯のエナメル質形成障害の発現機序を知ることを目的に,一定条件で発現率の高いエナメル形成障害を引き起こす外傷方法の検討のため,ラット下顎切歯を用いて,下顎外部から歯槽骨に向けて針を刺入させ小出血を起こす方法と,下顎外部に打撲を与える方法とにより比較検討を行った。さらに,形成障害部エナメル質の結晶成長への影響を検討した結果,以下の結論を得た。
    1.4日齢ラット下顎切歯の石灰化期エナメル芽細胞から基質形成期エナメル芽細胞の移行期に相当する部位に対して,注射針の刺入法では,エナメル質低石灰化,エナメル質減形成,そしてそれらを伴うものなどがあった。
    2.4日齢ラットの下顎外部より,3Nの力量で,針の刺入法と同部位で打撲を行う外傷法が最も高い発現率でエナメル質形成障害を引き起こすことができた。また,形成障害の種類は低石灰化の広がりの程度に差は見られるが,すべてエナメル質低石灰化を引き起こすことができた。
    3.形成障害部エナメル質の結晶性はa軸,c軸方向ともに低い傾向を認めた。TEM観察においても,実験群は,対照群に比べ,表層,中層ともに結晶の幅,厚みの減少が認められ,結晶成長の障害がうかがえた。
  • 松田 成彦, 長谷川 信乃, 篠田 圭司, 田村 康夫
    1997 年 35 巻 4 号 p. 706-714
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究はクレンチング時の咀嚼筋活動の対称性を評価するための非対称性指数(Asymmetry Index,A.I.)を臨床的に応用し,機能性反対咬合を有する小児の咬合状態と咀嚼筋A.I.との関係について検討を行ったものである。被検児は本学小児歯科外来に来院し,機能性反対咬合が認められた小児17名(男子7名,女子10名,平均年齢7歳6か月)を対象とし,左右側頭筋および咬筋活動よりA.I.を算出し検討を行った結果,以下の結論を得た。
    1)被検児17名全員に反対咬合部位に早期接触が認められ,早期接触部と咬合偏位側との間に一致が認められた。
    2)反対咬合群は,対照群に比較し側頭筋および咬筋活動に大きい非対称が認められた。
    3)側頭筋は偏位側の活動が優位になり,咬筋では反対側の活動が優位になる傾向が認められた。
    4)側頭筋および咬筋活動を,それぞれ偏位側優位群と反対側優位群に分け検討した結果,いずれもA.I.と側方偏位量および偏位量との間に高い相関が認められた。以上の結果より,機能性反対咬合による咬合の偏位はクレンチング時に左右咀嚼筋活動のバランスに影響を及ぼしていることが明らかとなり,咀嚼筋活動の左右バランスを非対称性指数で検討することは有効であることが示唆された。
  • 盧 兆民, 平良 梨津子, 玉井 良尚, 飯沼 光生
    1997 年 35 巻 4 号 p. 715-721
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    モルモットの離乳時期を生後3,7,14,30日とし,その後固形食または粉末食で飼育し,咀嚼機能獲得にどのような影響が生じるかについて検討した。生後3日より,3日ごとに体重,口腔内へ人工乳首を挿入しての乳首内圧の測定,および顎運動の肉眼的観察を行い,咀嚼リズム形成時期を調べた。
    その結果,規則正しい咀嚼リズムの形成された時期が3日後離乳群では固形食群で生後60.9±1.5日,粉末食群で生後70.6±1.5日,7日後離乳群では固形食群で生後50.5±1.8日,粉末食群で生後60.3±1.9日で,14日後離乳群では固形食群で生後42.6±2.7日,粉末食群で生後50.4±1.9日,30日後離乳群では固形食群で生後39.5±2.1日,粉末食群で生後42.3±2.4日で,離乳時期が遅いほど咀嚼リズム形成時期は早かった。またどのグループも親から分離すると,一時的に分離前よりリズムが乱れ,親と共に育てるということが咀嚼形成へのひとつのプラス要因となることが示唆された。
    以上のことよりモルモットにおいて離乳時期が不適切であると咀嚼リズム形成時期は遅れるものの最終的にはリズミカルな咀嚼が形成されることが示唆された。
  • 加納 篤子, 小笠原 榮希, 久保山 博子, 鶴田 勝久, 本川 渉
    1997 年 35 巻 4 号 p. 722-727
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回,口腔内及び鼻腔内異物の3症例に遭遇した。症例1での異物はプラスチックチューブ,症例2での異物は磁気治療器(ピップエレキバン®),症例3での異物はパチンコ玉であった。いずれの症例も患児からの異物侵入の訴えがなく無症状であったため,保護者も気づかず長期間経過していたが,摘出後の経過は良好である。これらのような事故を早期に発見するためには,保健所での乳幼児健診や,各診療所や病院での定期的な口腔内診査および管理の重要性が示唆された。
  • 三好 憲裕, 中村 由貴子, 岡崎 好秀, 下野 勉
    1997 年 35 巻 4 号 p. 728-731
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    高IgE症候群の大部分は,幼児期に発症すると言われている。再三,化膿症を繰り返すことが特徴で,起炎菌は黄色ブドウ球菌が最も多い。本邦における報告は,小児科からの報告が散見される程度であり,歯科からの報告は渉猟し得なかった。そこで,われわれは,高IgE症候群の1例を経験したので今後の参考になればと考え報告した。
    患者は3歳6か月男児で,生後3か月頃より顔面を中心にあせもを思わせる小水疱が出現するようになり,皮疹は軽快,増悪を繰り返していた。平成7年11月,当大学医学部小児科を受診し右側口角部粘膜の腫瘤を指摘され紹介により来院した。顔面および耳介には毛包一致性の小水疱と丘疹が散在し,掻爬によりその表面はびらんとなった。口腔内にはカンジダ症を思わせる所見はなく,右側口角部粘膜に咬傷と思われる傷とその直下に直径約10mmの腫瘤と多発性齲蝕を認めた。
    多発性齲蝕に対してはフッ化ジアミン銀を塗布し,咬傷に対してはテラコートリル軟膏を塗布した。同時に,腫瘤部に対して刺激を行わないよう注意を促した結果,腫瘤は消失した。また,齲蝕処置を継続したことにより,皮疹の軽快も認めた。
  • 川端 宏之, 川端 明美, 内山 盛嗣, 岩田 盛満, 岩崎 浩
    1997 年 35 巻 4 号 p. 732-739
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    癒合歯や先天性欠如が発現することにより,歯列あるいは咬合関係に異常を惹起する可能性が先人により示唆されている。著者らは,1口腔に永久歯の癒合と永久歯1歯の先天性欠如を認めた2症例を経験し,文献的考察を加え歯科的検討を行った。
    1.症例1は乳歯列期に_??__??__??_,_??_癒_??合__歯??B_のの先天性欠如が認められ,混合歯列期では_??__??__癒??_の合と2の先天性欠如を伴った症例であった。また症例1では父親に先天性欠如が認められたが,遺伝による癒合と先天性欠如との関連性は明確ではなかった。
    2.症例1の_??__??__??冠_歯近遠心幅径を唇面癒合線で分割計測した結果2は平均値より-1S.D.小さい値を示した。
    3.症例2は乳歯列時に_??__??__先??天_の性欠如を認め,混合歯列期となり_??__??__癒??合_のと2の先天性欠如を伴った症例であった。4.症例2の_??__??__??冠_歯近遠心幅径を唇面癒合線で分割計測した結果2,3ともに-3S.D.より小さい値を示した。
  • 高橋 薫, 黒田 洋史, 真柳 秀昭
    1997 年 35 巻 4 号 p. 740-749
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    東北大学歯学部付属病院の小児歯科外来において,歯科臨床に応用される修復物,補綴物,矯正装置に使用されている金属に対し,金属アレルギーを生じた症例を数例経験した。これらの患児はすべて何らかのアレルギー性疾患すなわちアトピー性皮膚炎,喘息,食物アレルギーなどを有していた。当科では現在までに,金属アレルギーの発症はアレルギー性疾患を有する患児にのみ認められ,健常児には1例も認められていない。
    金属アレルギーは皮膚症状のみならずさまざまな症状を呈することが報告されているが,今回我々が経験した症例では,全身性の皮膚炎のみが認められ,アトピー性皮膚炎を有する患児においては,鑑別診断が困難な臨床像を示した。また金属アレルギーの発症は,既存のアレルギー性疾患をさらに増悪させるため,アレルギー疾患を有する患児の歯科診療を行う場合には,十分な問診と診断が必要になる。
    今回報告した症例では,小児歯科臨床で用いられるインレー,乳歯冠および矯正器具に含まれる金属成分にアレルギーの発症が見られた。それは,比較的感作率が高いとされるNi,Co,Cr,Pdに多く認められたが,感作率が低いとされるAuにも認められた。
  • 塚田 久美子, 小笠原 正, 野村 圭子, 高井 経之, 穂坂 一夫, 渡辺 達夫, 笠原 浩
    1997 年 35 巻 4 号 p. 750-756
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    22番染色体の異常としては,22トリソミー,22モノソミー,22q-,r(22)等の異常が報告されている。これらの症例では精神遅滞,筋緊張低下,耳介の異常,特徴的な目などの特徴が指摘されている。
    今回われわれは,これらの報告例と類似した外表奇形を呈した22番染色体異常(46 XY,-22,+maker)の核型をもつ,7歳4か月の男児の歯科治療を経験した。
    患児は,知的発達がDA:1歳未満と著しい遅れを示した。顔面頭蓋部では,22番染色体異常症候群と一致して,長い睫毛,アーモンド様眼裂,大きな耳等の特徴がみられた。また,その他の所見として細長い手足の指が特徴的で,歩行不能,てんかん,上半身の不随意運動が合併していた。初診時には口腔清掃不良で全顎にわたる歯肉炎と11歯の齲蝕が認められた。重度の知的障害と上半身の不随意運動のため全身麻酔下集中歯科治療にて修復処置を行った。現在は定期検査を軸とした歯科的健康管理を行い,良好な経過を保っている。
  • 尾辻 渉, 棚瀬 精三, 近藤 俊, 姚 軍, 玉井 良尚, 林 寿男
    1997 年 35 巻 4 号 p. 757-761
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    朝日大学歯学部附属病院小児歯科外来において,11歳女児の上顎左側側切歯部の乳頭歯肉部に外傷が起因したと思われるエプーリスが認められ,組織学的には毛細血管の拡張を伴う肉芽腫性エプーリスの像を呈し,次のような所見を得た。
    1)患者は11歳の女児で,2年程前に上顎左側部の外傷に起因し,上顎左側側切歯と乳犬歯間の乳頭歯肉部に赤色の膨隆を示し,次第に膨大化し,1×1.5cm程度の有茎性,表面若干凹凸で赤色の腫瘤を認めた。
    2)エックス線所見では特記すべき異常所見は認められなかった。
    3)病理組織学的には,上皮は乳頭状過形成を呈していた。上皮表面には角化層がなく,むしろ潰瘍形成が見られた。肥厚した上皮下では形質細胞とリンパ球を中心とする慢性炎症性細胞の浸潤を多く認めた。上皮層の菲薄な部分では,拡張した血管が多く,基底層に接し,充血して見られ,いわゆる毛細血管拡張性の肉芽腫性エプーリスの像を呈していた。
    4)本症例の発生には外傷が起因し,その後,慢性刺激,急性炎症の他,思春期初期であることから女性ホルモンの調和障害もその誘因に加わったことが伺われた。
    5)処置は,局所麻酔下にて周囲骨膜を含め摘出した。術後の経過は良好であり,再発は現在認められない。
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