小児歯科学雑誌
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鼻閉時の食物咀嚼に関する研究
菅原 美佳
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1997 年 35 巻 4 号 p. 684-698

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抄録

本研究は鼻閉が食物咀嚼におよぼす影響を明らかにすることを目的に行った。成人5名(筋電図学的実験では6名)を対象とし,試料にはピーナッツ,ビスケット,カリントウ,ニンジンを用いた。鼻閉にはノーズクリップを用い,鼻腔を確実に閉鎖した。食物咀嚼実験では各被験者の一口量を元に咀嚼時間,咀嚼時唾液分泌量,嚥下時食塊水分量を求め,筋電図学的実験では咀嚼周期,筋放電持続時間,筋放電間隔を求め,同一被験者を対象に正常時と鼻閉時について比較検討し,次の結果を得た。(1)鼻閉時の一口量咀嚼時間は有意に延長した。(2)鼻閉時の嚥下時食塊水分量と咀嚼時唾液分泌量は,正常時との間に有意差が認められなかった。(3)鼻閉時では正常時に比べて咀嚼周期が有意に延長した。(4)鼻閉時の筋放電持続時間は延長する例,短縮する例,変わらない例が認められたが,いずれの場合でも正常時との間に有意差は認められなかった。(5)鼻閉時の筋放電間隔は正常時に比べて有意な延長を認めた。(6)鼻閉時の咀嚼周期の延長は,主に筋放電間隔の延長によることが示唆された。(7)鼻閉時の筋放電間隔の変動係数は高い値を示し,正常時と比較して咀嚼リズムが不規則であった。
以上のことより,鼻閉時の咀嚼時間の延長は筋放電間隔の延長によると推察された。また,鼻閉時の唾液分泌量の低下は,咀嚼周期の乱れも要因の一つであることが推察された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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