小児歯科学雑誌
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実験的外傷がラットエナメル質形成に及ぼす影響
エナメル質形成障害部の結晶性の検討
谷川 良謙尾辻 渉玉井 良尚棚瀬 精三
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1997 年 35 巻 4 号 p. 699-705

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抄録

乳歯の外傷による後継永久歯のエナメル質形成障害の発現機序を知ることを目的に,一定条件で発現率の高いエナメル形成障害を引き起こす外傷方法の検討のため,ラット下顎切歯を用いて,下顎外部から歯槽骨に向けて針を刺入させ小出血を起こす方法と,下顎外部に打撲を与える方法とにより比較検討を行った。さらに,形成障害部エナメル質の結晶成長への影響を検討した結果,以下の結論を得た。
1.4日齢ラット下顎切歯の石灰化期エナメル芽細胞から基質形成期エナメル芽細胞の移行期に相当する部位に対して,注射針の刺入法では,エナメル質低石灰化,エナメル質減形成,そしてそれらを伴うものなどがあった。
2.4日齢ラットの下顎外部より,3Nの力量で,針の刺入法と同部位で打撲を行う外傷法が最も高い発現率でエナメル質形成障害を引き起こすことができた。また,形成障害の種類は低石灰化の広がりの程度に差は見られるが,すべてエナメル質低石灰化を引き起こすことができた。
3.形成障害部エナメル質の結晶性はa軸,c軸方向ともに低い傾向を認めた。TEM観察においても,実験群は,対照群に比べ,表層,中層ともに結晶の幅,厚みの減少が認められ,結晶成長の障害がうかがえた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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