抄録
高IgE症候群の大部分は,幼児期に発症すると言われている。再三,化膿症を繰り返すことが特徴で,起炎菌は黄色ブドウ球菌が最も多い。本邦における報告は,小児科からの報告が散見される程度であり,歯科からの報告は渉猟し得なかった。そこで,われわれは,高IgE症候群の1例を経験したので今後の参考になればと考え報告した。
患者は3歳6か月男児で,生後3か月頃より顔面を中心にあせもを思わせる小水疱が出現するようになり,皮疹は軽快,増悪を繰り返していた。平成7年11月,当大学医学部小児科を受診し右側口角部粘膜の腫瘤を指摘され紹介により来院した。顔面および耳介には毛包一致性の小水疱と丘疹が散在し,掻爬によりその表面はびらんとなった。口腔内にはカンジダ症を思わせる所見はなく,右側口角部粘膜に咬傷と思われる傷とその直下に直径約10mmの腫瘤と多発性齲蝕を認めた。
多発性齲蝕に対してはフッ化ジアミン銀を塗布し,咬傷に対してはテラコートリル軟膏を塗布した。同時に,腫瘤部に対して刺激を行わないよう注意を促した結果,腫瘤は消失した。また,齲蝕処置を継続したことにより,皮疹の軽快も認めた。