抄録
東北大学歯学部付属病院の小児歯科外来において,歯科臨床に応用される修復物,補綴物,矯正装置に使用されている金属に対し,金属アレルギーを生じた症例を数例経験した。これらの患児はすべて何らかのアレルギー性疾患すなわちアトピー性皮膚炎,喘息,食物アレルギーなどを有していた。当科では現在までに,金属アレルギーの発症はアレルギー性疾患を有する患児にのみ認められ,健常児には1例も認められていない。
金属アレルギーは皮膚症状のみならずさまざまな症状を呈することが報告されているが,今回我々が経験した症例では,全身性の皮膚炎のみが認められ,アトピー性皮膚炎を有する患児においては,鑑別診断が困難な臨床像を示した。また金属アレルギーの発症は,既存のアレルギー性疾患をさらに増悪させるため,アレルギー疾患を有する患児の歯科診療を行う場合には,十分な問診と診断が必要になる。
今回報告した症例では,小児歯科臨床で用いられるインレー,乳歯冠および矯正器具に含まれる金属成分にアレルギーの発症が見られた。それは,比較的感作率が高いとされるNi,Co,Cr,Pdに多く認められたが,感作率が低いとされるAuにも認められた。