抄録
22番染色体の異常としては,22トリソミー,22モノソミー,22q-,r(22)等の異常が報告されている。これらの症例では精神遅滞,筋緊張低下,耳介の異常,特徴的な目などの特徴が指摘されている。
今回われわれは,これらの報告例と類似した外表奇形を呈した22番染色体異常(46 XY,-22,+maker)の核型をもつ,7歳4か月の男児の歯科治療を経験した。
患児は,知的発達がDA:1歳未満と著しい遅れを示した。顔面頭蓋部では,22番染色体異常症候群と一致して,長い睫毛,アーモンド様眼裂,大きな耳等の特徴がみられた。また,その他の所見として細長い手足の指が特徴的で,歩行不能,てんかん,上半身の不随意運動が合併していた。初診時には口腔清掃不良で全顎にわたる歯肉炎と11歯の齲蝕が認められた。重度の知的障害と上半身の不随意運動のため全身麻酔下集中歯科治療にて修復処置を行った。現在は定期検査を軸とした歯科的健康管理を行い,良好な経過を保っている。