小児歯科学雑誌
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11歳女児に見られたエプーリスの1例
尾辻 渉棚瀬 精三近藤 俊姚 軍玉井 良尚林 寿男
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1997 年 35 巻 4 号 p. 757-761

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抄録
朝日大学歯学部附属病院小児歯科外来において,11歳女児の上顎左側側切歯部の乳頭歯肉部に外傷が起因したと思われるエプーリスが認められ,組織学的には毛細血管の拡張を伴う肉芽腫性エプーリスの像を呈し,次のような所見を得た。
1)患者は11歳の女児で,2年程前に上顎左側部の外傷に起因し,上顎左側側切歯と乳犬歯間の乳頭歯肉部に赤色の膨隆を示し,次第に膨大化し,1×1.5cm程度の有茎性,表面若干凹凸で赤色の腫瘤を認めた。
2)エックス線所見では特記すべき異常所見は認められなかった。
3)病理組織学的には,上皮は乳頭状過形成を呈していた。上皮表面には角化層がなく,むしろ潰瘍形成が見られた。肥厚した上皮下では形質細胞とリンパ球を中心とする慢性炎症性細胞の浸潤を多く認めた。上皮層の菲薄な部分では,拡張した血管が多く,基底層に接し,充血して見られ,いわゆる毛細血管拡張性の肉芽腫性エプーリスの像を呈していた。
4)本症例の発生には外傷が起因し,その後,慢性刺激,急性炎症の他,思春期初期であることから女性ホルモンの調和障害もその誘因に加わったことが伺われた。
5)処置は,局所麻酔下にて周囲骨膜を含め摘出した。術後の経過は良好であり,再発は現在認められない。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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