抄録
咬耗の殆ど認められない3歳0か月から3歳1か月未満の小児の正常乳歯列模型を使用し,上顎第一乳臼歯および第二乳臼歯の頬側溝展開角について計測した結果,以下の結論を得た。
1)頬側溝展開角の平均値は,中央小窩寄り1/3では,上顎第一乳臼歯で128.40°,上顎第二乳臼歯で107.43°であった。頬側縁寄り1/3では,上顎第一乳臼歯で137.44°,上顎第二乳臼歯で107.15° であった。
2)第一乳臼歯は第二乳臼歯に比べ,頬側溝展開角は大きく,また,中央小窩から頬側縁に向かうに従い,大きくなる傾向が認められた。
3)上顎乳臼歯における窩洞形成時の頬側溝追求の有無を調査したところ,第一乳臼歯では,頬側溝を追求した症例は32%,頬側溝が存在していたにもかかわらず,追求されていなかった症例は68%であった。一方,第二乳臼歯では全ての症例において頬側溝が追求されていた。