抄録
水酸化カルシウムの根尖周囲組織におよぼす影響を調べるため,ヒト二倍体線維芽細胞(WHE-7細胞)およびヒト歯肉由来線維芽細胞(GFB細胞)に水酸化カルシウムおよびホルモクレゾールを作用させ比較検討をした。その結果,ホルモクレゾールでは濃度の上昇にしたがい細胞が増殖抑制され,細胞形態は変性,萎縮が認められた。一方,水酸化カルシウムでは細胞増殖の抑制もなく,細胞の形態変化はなかった。水酸化カルシウムを作用させた場合のカルシウムイオンは,水酸化カルシウムの濃度に依存することなく一定であった。
以上の結果,水酸化カルシウムはホルモクレゾールにくらべ細胞毒性がなく組織為害性が少ない根管貼薬剤といえる。