抄録
小児の咬合機能の発達過程を解明する共同研究の一環として,六大学の小児歯科が協力し,下顎第一大臼歯の萌出早期から萌出終了に至る間の経年的な咬合接触状態と咬合による物理的な力の推移に関して,デンタルプレスケールを使用し,6か月毎に計4回の資料を採取し分析し,以下の結論を得た。
1.歯単位で評価した場合,第一大臼歯の咬合面積の推移について5群に分けられ一定した変化を示さなかった。また,この経時的変化を咬合面積と平均圧力,咬合力,最大圧力それぞれとの関係を統計学的に検討した結果,すべてが有意水準P<0.05にて,有意な正の相関を示した。
2.症例単位で評価した場合,左右第一大臼歯の咬合面積の推移関係は4群(並行分離型,途中交叉最後一致型,途中交叉最後不一致型,並行一致型)に大別された。最後不一致型について,左右バランスの観点から第二乳臼歯を考慮した場合,途中交叉最後不一致型では,最終的に第二乳臼歯の咬合面積により補償傾向が認められた。しかし並行分離型では第二乳臼歯の咬合面積を考慮しても不均衡な状況のままであった。最後一致型では,定性的にも定量的にも最終的にバランスが保たれていた。