小児歯科学雑誌
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遺伝性歯肉線維腫症の歯科学的ならびに病理,免疫組織化学的検索
高森 一乗三浦 保紀倉田 香宇都宮 忠彦吉田 明弘山本 浩嗣前田 隆秀
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1999 年 37 巻 4 号 p. 685-694

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抄録
病歴,家族歴ならびに病理組織学的診断により遺伝性歯肉線維腫症(HGF)と診断された患児を経験し,歯科学的ならびに免疫組織化学的に検索を行った。
歯科学的検索は,パノラマエックス線,頭部エックス線規格写真,歯列模型分析を用いて行ったところ,HGF患児のプロフィログラムは,同年代基準値に比較して,顎顔面は小さい傾向を示した。歯列模型分析においては,乳歯列の基準値とほぼ同様であった。病理,免疫組織化学的検索は,切除した歯肉を通法に従いパラフィン連続薄切切片を作製し,細胞増殖の指標であるproliferating cell nuclear antigen(PCNA)抗体を免疫組織化学染色ならびに,細胞外マトリッククス分解酵素の一つであるmatrixmetalloproteinase-1(MMP-1)抗体を蛍光免疫組織化学染色を行った。PCNAは光学顕微鏡下にて,MMP-1は,共焦点レーザー顕微鏡下にて観察し,健常児歯肉と比較検討したところ以下の結果が得られた。
PCNA抗体の比較において,HGF患児歯肉の上皮細胞,歯肉線維芽細胞は,健常児と比較して,陽性細胞率が,統計学的有意に高かった。MMP-1抗体の比較においては,単位面積当たりの蛍光強度を比較検討したところ,有意差を持ってHGF患児が少なかった。
以上の結果より,HGF患児の歯肉は,細胞増殖能が健常児より高く,また,細胞外マトリックス代謝におけるマトリックス分解能は,健常児に比べ低いという生理的不調和が遺伝性歯肉線維腫症の誘因であることが強く疑われた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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