小児歯科学雑誌
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小児の唾液分泌速度に関する研究
咬合圧刺激および味質刺激に対する反応
平澤 雅利
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2000 年 38 巻 1 号 p. 93-103

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抄録

小児の唾液分泌に関する基礎的なデータを得るために,混合唾液および耳下腺唾液について安静時分泌速度ならび,四基本味含有チューインガム咀嚼,咬合圧刺激および味質溶液刺激による耳下腺唾液分泌速度と刺激後最大分泌速度に達するまでの時間を測定し,成人と比較した。
1.小児(平均年齢6歳5か月)の安静時混合唾液分泌速度は0.25±0.22ml/minで成人(平均年齢27歳3か月)の約79%であった。
2.四基本味含有チューインガム咀嚼刺激による小児の混合唾液分泌速度は酸味,塩味,甘味,苦味の順で多く,この順序は成人と同じであった。また,混合唾液分泌速度は味質濃度に依存し,高濃度で速く,その増加率も成人とほぼ同程度であった。
3.本実験で用いた小児における咬合圧刺激(第二乳臼歯間)は平均7.47±2.20kgで,成人(第一大臼歯間)の36%であった。この咬合圧刺激条件下における耳下腺唾液分泌速度は,安静時の約6倍(成人:6.5倍)に増加した。咬合圧刺激を加えてから刺激後最大分泌速度に達するまでの時間は13.83±3.60秒で,これは成人とほぼ同じであった。
4.クエン酸溶液,塩化ナトリウム溶液による耳下腺唾液分泌速度はいずれも高濃度の溶液が低濃度の溶液より大きく,有意差が認められた。最大分泌速度に達するまでに要する時間は濃度間に有意差はなく,平均して6.73±3.16秒であった。
5.今回の実験から,小児と成人の唾液分泌機能を比較すると,小児の唾液分泌速度は成人より少ないが,刺激の強さや分泌開始後,分泌速度が最大値に達するまでの時間などについてはほぼ成人と等しいことが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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