抄録
著者らは平成3年5月より特殊歯科治療部内に摂食指導外来を新設し,摂食指導を行ってきている。新設から平成10年12月までの7年7か月間に摂食指導外来を初診で来院した20歳未満の患者を対象として初診時の実態を把握し,評価するために臨床統計的検討を行った。
1.初診患者総数は,男94人,女93人,計187人であった。年齢分布は0歳5か月から19歳4か月で,平均は5歳11か月(男6歳1か月,女5歳8か月)であった。
2.粗大運動発達は,頸定不可34.2%,頸定可22.5%,座位可12.8%,つかまり立ち可10.2%,介助歩行3.2%,独歩17.1%であった。
3.初診時の呼吸状態では18.7%に呼吸状態不良が認められた。栄養摂取法は,経口摂取72.7%,経鼻チユーブおよび経口15.5%,胃瘻および経口2.2%,経鼻チューブのみ9.6%であった。
4.摂食機能評価では過敏が13.9%,乳児様嚥下が16.0%に認められた。捕食時の口唇閉鎖機能では口唇でしっかり取り込めない例が24.1%,舌運動では前後13.3%,上下26.2%,左右54.5%,顎運動では単純上下40.1%,移行13.9%,側方臼磨39.6%であった。
5.粗大運動発達と口唇閉鎖機能との関係では,粗大運動発達が良好であれば口唇閉鎖機能の不良な例が少なくなる傾向が認められた。摂食外来に来院した患者の多くに摂食機能に関して未発達な症例が顕著に認められた。