小児歯科学雑誌
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歯科における行動科学
不安,行動および鼻部皮膚表面温度の関係
中村 隆子
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2001 年 39 巻 1 号 p. 173-183

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抄録

歯科診療では麻酔,切削などの刺激が患者にとって心理的なストレスとなることが多い.そのため,ストレスが患者にどのような影響を与えるかを知り,その原因を取り除くことは歯科診療を快適に行う上で重要である.今まで,心理学的観点,行動学的観点,生理学的観点から歯科診療中の麻酔,切削といった行為がどんなストレスを与えているかが調べられてきた.しかしながら心理学的な変化によって生ずる行動が生理学的観点からどういう意味を持つのかについてはあまり知られていない.そこで歯科診療に伴う不安による行動が鼻部皮膚表面温度の変化におよぼす影響について検討した.
この研究の対象は,96人の小児患者(男児47名,女児49名)である.
不安度は日本版児童用状態・特性不安検査(STAIC)と吉田によって改変された歯科不安調査(DFS)により測定した.歯科診療中の行動と経過については2台のモニタリング用カメラとビデオで観察し,3名の評価者により行動の評価および体の部位別の行動記録を行った.鼻部皮膚表面温度はサーモグラフィによって測定した顔面表面温度を記録し,変動係数(CV)および変化幅(Range)を算出した.その結果,歯科治療に対する不安は歯科診療中の患児の行動を反映した.また,状態不安が高いほど鼻部皮膚表面温度の変動係数も大きかった.行動表出が大きいと鼻部皮膚表面温度の変動が大きかった.そして歯科治療中の患児の行動そのものがストレス対処として働き,鼻部皮膚表面温度の変動係数を減少している可能性が示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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