抄録
永久歯の歯冠の完成後から,萌出までの問に特発性歯冠吸収を起こしたと思われる2症例を経験した.
症例1の男児では,6歳0か月時のデンタルエックス線所見で,上顎中切歯の歯冠は完成しており,特に異常は認められなかったが,8歳6か刀時には,萌出中の上顎右側中切歯の歯冠に実質欠損が認められた.エックス線所見では歯冠の近心側1/2,切縁側1/2付近までおよぶ透過像を呈していた.患歯の舌側の欠損部を満たしていた歯肉と連続した軟組織を除去したところ,点状露髄が認められたため歯髄掻爬術を施行した.
症例2の女児では,7歳1か月時のパノラマエックス線写真で,下顎右側第二大臼歯の歯冠はほぼ完成していたが,歯冠に形成異常を疑わせる点状の透過像が認められた.10歳6か月時に齲蝕診査のため咬翼法エックス線写真を撮影した際,未萌出の下顎右側第二大臼歯の歯冠中央部に大きなエックス線透過像を発見した.咬合面相当部の歯肉を開窓したところ咬合面形態に異常はなく,歯表面から内部へ通じる欠損は検出できなかった.約1か月後,患歯付近に自発痛が生じたため咬合面の裂溝を開拡したところ,直径1mmの露髄を伴う大きな象牙質の実質欠損が認められたため,直接覆髄を行った.
2症例で認められた歯冠の部分的な実質欠損は,形成不全や齲蝕による結果とは考えにくく,歯冠の完成後に生じた歯冠部の特発性吸収であると推察される.