抄録
乳歯の生理的動揺度を歯根吸収程度別に客観的に評価する目的で本研究を実施した.被検対象は,上顎乳中切歯129歯および上顎乳側切歯201歯であり,これら被検歯を生理的歯根吸収の有無ならびに程度により,歯根吸収0および歯根吸収I,II,IIIの4段階に区分した.動揺度測定には,デンタル・モビリティ・チェッカー®(株式会社ヨシダ社製)を使用し,各被検歯の歯根吸収程度別に動揺度の測定を行い,以下の結論を得た.
1.乳中切歯の各歯根吸収程度別にみた動揺度測定値は,歯根吸収0では3.0から1.9を示し,その平均値および標準偏差は25±0.28であった.歯根吸収Iでは3.8から2.1で平均値および標準偏差は2.8±0.45であり,歯根吸収IIでは6.4から2.1で平均値および標準偏差は4.0±1.08,歯根吸収IIIでは12.6から3.4で平均値および標準偏差は7.4±2.14であり,歯根の吸収程度が進行するに従い測定値すなわち生理的動揺度は増加した.
2.乳側切歯の歯根吸収程度別にみた動揺度測定値は,歯根吸収0では4.5から1.9を示し,その平均値および標準偏差は3.1±0.50であった.歯根吸収Iでは5.9から2.2で平均値および標準偏差は3.7±0.83であり,歯根吸収IIでは6.6から3.1で平均値および標準偏差は4.3±1.16,歯根吸収IIIでは14.9から3.7で平均値および標準偏差は7.9±2.65であり,乳中切歯と同様,歯根の吸収程度が進行するに従い測定値すなわち生理的動揺度は増加した.
3.本研究に用いた動揺度測定器は,小児患者にも恐怖心を与えることなく使用可能であり,槌打時の歯牙に加わる衝撃も少ないことから,小児歯科臨床において有効に使用できるものと考えられた.