小児歯科学雑誌
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第一大臼歯と中切歯の萌出順序
今村 基尊石原 摩美近藤 信太郎佐藤 久美子森 泰造大迫 佳子小野 俊朗土屋 友幸桑原 未代子
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2001 年 39 巻 3 号 p. 503-515

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抄録

1980年以前の報告では日本人の下顎第一大臼歯は,下顎中切歯より先に萌出していた.1988年の日本小児歯科学会の全国調査では,下顎中切歯は下顎第一大臼歯より先に萌出していた.歯の萌出順序,それも加生歯の中で最初に萌出する下顎第一大臼歯と,第2生歯の中で最初に萌出する下顎中切歯の萌出順序が入れ替わることは,極めて重要な問題を示唆していると考えられる.そこで著者らは,個々の個体において中切歯と第一大臼歯のどちらが先に萌出したかを観察し,その割合を生年別に分類し,年代と共にどのように変化してきたかを検討した.
その結果日本人小児において,1970年代に生まれた小児において中切歯が先に萌出するI型が増加し,50%以上となった.また,1930年代の岡本の乳歯や永久歯の萌出時期の調査と1988年の日本小児歯科学会の調査,さらに国内外の歯の萌出時期に関する文献を比較検討し以下の結論を得た.(1)日本において1970年代に生まれた小児で下顎I型の割合が増加したのは,食生活を含めた生活環境,特に欧米型の生活様式が,その要因の一つになっていると推察された.(2)下顎I型の割合が増加したのは,第2生歯が早熟となり萌出が早くなったためと考えられた.(3)将来I型の小児の割合がもっと増加するようになれば,現在のHellmanの咬合発育段階にIIB(切歯の交換期)を追加する必要があると考えられた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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