小児歯科学雑誌
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上顎乳犬歯,犬歯の排列位置の変化に関する累年的研究
乳歯列完成期から永久歯列安定期まで
福山 達郎藥師寺 仁
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2001 年 39 巻 3 号 p. 614-636

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抄録

歯列の発育過程で,乳犬歯および犬歯がどのような位置的変化を示すかについて,同一個体の累年歯列模型を用いて調査した.資料は,乳歯列完成期から永久歯列安定期まで可及的に2か月間隔で印象採得して得られた累年歯列模型50組である.これらを永久歯列期の排列状態から,正常歯列群と叢生歯列群に分け,乳犬歯および犬歯の最近・遠心点および唇・舌面最突出点の累年的位置変化を咬合面方向から観察した.
その結果,平均変化では,乳犬歯の各計測点は,正常歯列群,叢生歯列群ともに前外方へ移動していたが,両群の移動量を比較すると,正常歯列群の方が大きかった.これに対し,犬歯では,前内方への移動が認められた.両群の移動量を比較すると,前方移動は正常歯列群で,内方移動は叢生歯列群で大きな値を示した.永久歯列安定期の犬歯最遠心点の前後的位置を乳犬歯脱落直前のそれと比較すると,正常歯列群では両者間にほとんど変化がなかった症例が,左右側合計で20例,1mm以上前方へ移動した症例が40例であった.叢生歯列では,ほとんど変化のみられない症例が19例,1mm以上前方移動した症例が17例,正常歯列にはみられない1mm以上後方へ移動した症例が4例みられた.以上の結果から,歯列の成長過程で正常歯列となる症例の犬歯は,乳犬歯の排列位置とほぼ同位置か,あるいはより前方に排列するのに対し,前歯部が叢生となった症例では犬歯が後方移動する症例もみられた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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