小児歯科学雑誌
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乳歯列完成期から永久歯列安定期までの切端・尖頭・咬頭頂連続曲線の累年的変化に関する研究
正常永久歯列と叢生永久歯列との比較
今井 裕樹藥師寺 仁
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2001 年 39 巻 3 号 p. 637-657

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抄録

乳歯列完成時に正常歯列であった同一個体の乳歯列期から永久歯列期までの累年歯列模型44症例を資料に,切端・尖頭・咬頭頂連続曲線の変化を観察し,さらに正常永久歯列になった群と叢生群との変化の差違を検討した.その結果,上顎歯列の連続曲線は,最凹彎部が歯列の成長過程で,乳犬歯尖頭,第二乳臼歯遠心頬側咬頭,第一小臼歯頬側咬頭へと移動するものの,いずれも緩やかな凹彎状の曲線を呈していた.一方,下顎の連続曲線は,乳歯列期には乳犬歯で凸彎し,第二乳臼歯近心頬側咬頭で凹彎するS字状彎曲を,混合歯列期にはS字状彎曲から第一大臼歯近心頬側咬頭を最凹彎部とする緩やかな曲線を呈し,永久歯列期には第一大臼歯近心頬側咬頭を最凹彎部とする曲線であった.また,上下顎とも彎曲程度は,乳歯列期から永久歯列期まで漸次増加していた.正常歯列群,叢生歯列群とも,各計測部位の上下的位置の変化は類似し,両群問に明瞭な差違を認めなかったが,4計測部位で,乳歯列完成時から混合歯列移行直前までの変化量に両群問で有意な差(p<0.01)がみられたことから,この4計測点を用い判別分析を行った.有意差がみられた各計測部位の変化量を変数X1~X4とした際の判別関数は,Z=0.1233+1.2588X1-0.9483X2+0.0612X3-0.7749X4であり,77.3%の確率でZ>0は正常歯列,Z<0は叢生歯列と判別できた.従って,この変化量は正常歯列と叢生歯列とを判別する一因子である可能性が示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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